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積  乱  雲

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ローリエ・K

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2008.07.27
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カテゴリ:あとりえ

歌うことを仕事にしている人に初めて会った。ホンモノの声楽家、テノール王子である。

「森の音楽」をテノールさんのために作った。テノールさんに出会う前に、これからどんな音楽の森に入っていくのか、とってもわくわくしたのだ。わたしの全身が耳になって、どこへ進んでいくのか?森の中はまだ暗くて、よく見えない。

テノールさんがわたしにベッドの横に、すっと現れた。挨拶しただけで、その声の奥に森が見えた。木の葉の間から木漏れ日が線になっている。

テノールさんが話すたびに、森の中が明るくなっていく。

そして、なんと、歌ってくれた。わたしの詩にすでに知っていたたくさんの曲からピッタリのメロディーをつけた小曲だ。

感動して呆然とした。そのあと、少ししてから、体がモーレツに緊張した。体の細胞が喜んだのだ。初めてホールで音楽を聞いたときのふわふわをまた感じた。

なんで、こんなに美しい声が出るんだろう。ものすんごく、練習したにちがいない。人間とはすごい。わたしの詩のことばがふってくるように、テノールさんの音楽はふってくるのだろうか?どこから、何にのって、どんな道のりで、何と一緒に、どんな臭いで、どんな色で??????

クララさんのクラリネットの生演奏もそうだけれど、テノールさんの声の響きにも宇宙の空気のすきまから入り込んできたような、今、ここでしか聞くことのできない光を感じた。今はもう消えてしまってみえないけれど、確かにそこにあって、つかみそうだった光だ。

本の行間に染み出てくる作者の精神とか、大好きな人に会ったときに呼吸がラクになることや、美しいものに接したときに首の付け根をすっと羽で触られたような。見えなくても、たしかにそこにあった光。

いのちの光なのか。なんだろう?

テノールさんの音楽と一緒にわたしの詩がまた、息をしそうだ。何を見て何を感じてどんな詩が生まれるか。テノールさんとどんなコラボになるのか。どんな森の景色になるのか。

ただのわくわくに、皮膚感覚が加わった。わたしがコーフンして腕をのばしたときに、すっと手をとってくれた。テノールさんの手は柔らかい手だった。そっと触って握手して、その瞬間森の門が開いたような気がしました。

世の中に音楽があって、ほんと、よかった。テノールショックで、ぱっちり目がさめた。こうしてはいられない。






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Last updated  2008.07.27 11:01:00



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