こきっつぁんのミッドナイトメルヘン 「湯豆腐」
今日の夕飯のおかずは、湯豆腐だった。「ひとり鍋」用の土鍋に、ちょこんと鎮座していた絹ごし豆腐が、湯が沸騰すると同時に、目覚めたのかのように踊り出す。さしずめ、ユーロビートに乗って踊る、コギャルのパラパラダンスか。決して、体全体が移動することはない。パラパラも最高潮に達したところで、無情にも、土鍋の下の卓上コンロの火を消す。途端に豆腐はおとなしくなる。でも、まだ余韻は残っている。そこで、クールダウンさせる為、土鍋の舞台から小皿に移し、薬味のネギとかつおぶしを豆腐の頭上に振りかける。さらに、その上から、「頭を冷やせ!」と言わんばかりに、醤油をたらす。そうしてやっと、普段の豆腐の落ち着きを取り戻す。豆腐はでしゃばらない。ほかのおかずにぴったりと寄り添う。豆腐は飽きない。何度味わっても滋味深さを感じる。豆腐は裏切らない。どんな時でも、おかずの一員になってくれる。まるで豆腐は、白い柔肌のしっとりとした日本女性のよう。そんな豆腐だから、たまのパラパラダンスが、やけに魅力的に見える。そう、湯豆腐の湯気の向こうに見える、あなたの笑顔のように。それでは曲です。吉幾三の「TOFU」 どうぞ!