当駄ブログを見て、私のことを、
お前もノイズに悩まされているのか~~と思って見ている人は
幾許かいる、ってことがわかりました。
それに、「斜めノイズ」に悩まされている人も結構多いことも。
ちょっとエゴサーチしてみたんですけどね(^^ゞ
処理が悪いからこうなるんだろう、と思われる方が多いようですけど
実はそうではないんですよ。
いや、ちょっとした処理方法があって、それを使えば
斜めノイズもキャンセルできる、と、とある師匠から教えていただきましたので
その処理方法をいまだに出来ない私の処理が悪い、と言えばそうなんですけど。
でも斜めノイズが出る原因の一つは、撮影方法なんですよね。
撮影時にちょっとひと手間加えるだけで、
斜めノイズからかなりの確率で解放されるんですよ。
銀塩フィルムとデジタルカメラ
~画像のざらつきが起きる理由の違い~
銀塩フィルムのころの天体写真は、
ばっちりガイド撮影して長時間露光一発!だったのですが
デジタルカメラの時代になってから考え方が大きく変わったんですよね~~。
私も最初は頭の切り替えがつかず、ずいぶんと悩みました・・・
銀塩フィルム時代の画像のざらつきは感度に比例していて、
低感度フィルムであればなめらかになっていました。
ところがデジタルカメラはセンサーで畜光しますが、
そのセンサーが働くためには電気が必要で、当然露出の間通電が続きます。
通電中の電気的なノイズや、通電によって発生する熱などによるノイズ、が加わり、
感度を上げることによって増えるノイズ、だけでなく
露出時間が長くなることによるノイズ、を考えないといけません。
デジタルカメラでの最適露出時間の決め方
この露出時間が延びることによるノイズは等比級数的に増えますから、
露出時間を延ばせば延ばすほど光子の蓄積ができるフィルムとは違い
光子が蓄積してゆく速度 を ノイズが増える速度 が 超える前に露光をやめた方がよい
という理屈になります。
銀塩乳剤は化学反応が起きなければそこに光を表現できませんが
デジタルセンサーは、光子をキャッチしたというデータは微量でも残せるので
後で画像処理すればわずかな光でさえ再現できる(らしい・(^^ゞ)のです。
ただし、もちろん、画像処理すれば微量のノイズの明るさも明るくなっていきます。
デジタルカメラでノイズの少ない画像に仕上げたい
画像処理するとノイズも目立ってきます。
フィルムと違ってどれだけ感度を下げてもこの電気的なノイズはどうしても生まれますから
なんとかそのノイズを減らしたい。
さてどうしよう・・・
たとえば撮影した1枚の画像と、4枚とか8枚とかをスタック(コンポジット)したものを比べると
それだけでノイズが大きく減っていることがわかります。
ノイズは重ねた枚数n枚に対して1/nになります。
画像処理はそこからさらに強調処理をしますのでもっともっとノイズを減らしたい、
100枚とか200枚とか・・・
出来る限りノイズと信号の差が大きくなる露出時間で撮影した画像を
出来る限りたくさん用意して、
それをスタック(コンポジット)することによってよりノイズと信号の差を大きくする
ということが勧められるわけですが、
それが今はやりの短時間露光多数枚撮影による天体写真の考え方です。
斜めノイズはどういう理由で発生するのか
さて、表題の、「斜めノイズ」ですが
実は撮影範囲が規則的に一方向にずれてゆくことで発生します。
短時間露光ですから、それなりの赤道儀であれば、オートガイドしなくったって
一枚当たりでは星はちゃんと点に写ってくれます。
ところが、ピリオディックモーション(歯車のわずかな偏心による、回転速度のずれ)や
極軸のほんのわずかなずれによって
1時間も撮影すれば、最初の画像と最後の画像では
撮影範囲がほんの少し変わっているものです。
左右方向のブレがピリオディックモーション
縦方向のずれが極軸のずれによる移動です。
1枚30秒で撮影したって、100枚とか200枚だったら、50分とか100分とか。
さすがにその間ノータッチだったら、撮影範囲は多少ずれますよね??
しかも一定方向に規則的にずれてゆきます。
スタックしても完全には消えきれないノイズがあるのですが
そのノイズがずれの方向に規則的に並んで残ってくる、それが斜めノイズです。
ほら、ずれた方向に斜めノイズが出ているでしょ??
ためしにこれと同じような方向に文字をずらした画像を
トーナメント方式でコンポジットするとこうなります。
ね、斜めノイズでしょう??
ちなみに・・・
たとえばっちりオートガイドしても鏡筒のたわみなどで同じようなことは起きてしまいます。
もっとも
微動だにしないくらいまで完璧なガイドをすると
スタックしても固定ノイズが減らせないという結果になりかねませんが・・・
斜めノイズを発生させにくい撮影方法はあるか??
さて斜めノイズ(以前は引っかき傷のような、と書きましたが)の発生原因がわかったら
その規則的な動きをさせなければよい、ということになります。
だったら不規則にずらしちゃえ!ってことになりますね~~
ディザリング、という撮影方法になります。
不規則に撮影範囲を変えることによって、ノイズが規則的に一列に並ぶのを防ぐんです。
DeepSkyStackerでは、KappaSigmaClippingというスタック方法が使えますので
同じ場所の明るさ情報を統計処理して、異常値はカットしてスタックすることができます。
航空機や人工衛星が視野を横切っても、異常値ですからきれいに消えます。
この方法でスタックすると見事に、斜めノイズが現れないなめらかな画像に処理できます。
ディザリングした画像63コマを比較明合成してみました。
一番明るい星を見ていただくと、どの程度動かしたかわかると思います。
ちなみにこの画像をDeepSkyStackerでスタックしてみると
こんな感じになります。
センサーのベイヤー配置も影響するカラーノイズは残っていますが、
斜めノイズはなくなっているでしょう??
この画像でもノイズリダクション処理を追加する前ですからね!
ちなみに、斜めノイズや、
IMX174センサー(Canon のカメラに採用されているセンサー)
に特徴的に出るといわれる横縞ノイズが目立っている画像の方も
NeatImageや、AS!3のRowNoiseCorrectionを使うと
ここまでノイズを減らすことができます。
だいぶ良いですが、
もともと斜めノイズが出にくい撮影方法だと、
さらにステライメージの選択マスクなどを加えて星雲を強調した処理をしても
ほとんどノイズが浮いてこないんですよ
(NeatImage処理は追加していますが)
不規則に動かすタイミングや移動量は?
撮影した画像をタイムラプスにするのが、
違いがわかるでしょうか??
YOUTUBE
https://youtu.be/fV3bUpzxjBc
ディザリング撮影はノータッチガイドでしかできないか??
ならば、やはりガイド星を使わないノータッチガイドしか無理か??
いえいえ、PHD2ガイディングというフリーソフトには、オートディザ、
という機能があるそうですよ~~
(わたくしまだ試しておりませんが・・・(^^ゞ)
この方法は、わたくしの周囲にいる斜めノイズに悩まされている方々何人かから
斜めノイズから解放された、と返事をいただいております。
これまで短時間露光多数枚撮影をしたのに斜めノイズに悩まされなかったのは
途中でガイドエラーなどが出て、ガイド星を選択しなおしたりして、
無意識のうちにディザリング効果が得られていた、ということがないでしょうか?
私の友人の中には、ガイドエラーが起きなくなったら斜めノイズが出るようになった
というかたもいました。
追加
なお、DSSのことを教わった師匠からは
斜めノイズのある画像も画像処理でキャンセルできるよ、と連絡をいただきましたが
海外の有料画像処理ソフトである、ということと、説明書が英語ということで
まだその境地には到達していません(*≧m≦*)
追加2
実はディザリングのことは数年前に、また違う師匠からも教わっていたのですが
その当時は画像処理が悪くて(*≧m≦*)斜めノイズが浮かび上がるほど
レベル補正ができていなかったり、
ディザリングのやり方がよくわからず、知らんぷりを決め込んでいました。
ようやくディザリングの必要性を感じるほど画像処理ができる
またはそういう対象を撮れるようになり、
必要性を実感した、という次第です(^^ゞ