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ひなつのひとりごと

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2005/05/30
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カテゴリ:和全般
この方のことを恥ずかしながらよく知らなかったのですが、以前に上野の美術館で観たお風呂の絵(「浴女 その一」東京国立近代美術館蔵)がとても印象に残っていました。

今回の展覧会(5/29で終了)は生誕110年記念ということですが、亡くなられたのが2000年とつい最近で、105歳という大往生、しかも100歳を超えてなお絵筆をとっていたという驚くべき大往生・画家人生を送られたのですね。

初期の作品から、この人の絵はぽかーんと天に突き抜けたような明るい色彩に溢れた、透明感のある独特の世界を作り出しています。
色が明るくてとてもきれい。
丹念に書き込むのではなく、背景も線も、画面が全体にシンプルなせいでしょうか。
どの絵をみても、この人らしい強烈な個性を放っています。

この、強烈な個性というものが、芸術家の真髄であると思います。
技巧的に上手い人はたくさんいるでしょうが、どの絵をとっても、紛れもなくその人の絵だと一目で分かる、独自の世界を構築しているか否か。

初期の頃のものだったか、屏風一面に苺畑が描かれたものがありました。
屏風絵としては異色の題材ですが、画面を埋め尽くすみずみずしい葉っぱ、敷き藁一本一本まで丁寧に描かれ、苺の赤のアクセントが効いています。
中央には、苺つみをする女性がおり、その若さを感じさせる柔らかそうな指先が苺の赤にほんのり染まっています。
初夏のみずみずしさが画面いっぱいに溢れた、とても素敵な絵でした。


また、力のある人の絵というのは、シンプルな線であっても、ヘタウマなようであっても、フォルムや質感など、その「物」らしさがとてもでているものです。
何気なく描いたようなものでも、平面の絵なのに奥行きや立体感、質感までもが感じられるのです。

これも、彼女の絵を観ていて非常に感じることなのです。
マスカットの丸くみずみずしい質感、今にも綻びそうな丸く膨らんだ梅の蕾、芥子の花の茎のくねった感じ、厚ぼったいカットグラスの感じ、花菖蒲のビロードのようにぼってりと垂れ下がった花びらの感じ・・。
着物も、浴衣姿の子どものふわふわした兵児帯、絞りの浴衣のやわらかくハリのある綿の感じ、子どもの格子の着物のぶわぶわっとしたウールの質感などが感じられます。

極めつけは焼き物のものすごい存在感です。
焼き物がお好きだったらしく、静物画の絵の中に描かれている器たちが、ものすごい存在感を放っているのです。
古九谷が多いのですが、古伊万里の赤絵や李朝の白磁の壷、祥瑞の捻り徳利など、絵の中の焼き物たちがおそろしく魅力的で、「この器欲し~~い!」と何度思ったことでしょう。
絵の隣に実物も展示されているのですが、恐らく白州正子さんの向こうを張る?骨董好き垂涎のコレクションとお見受けしました。

しかし、絵の中の器は本物をさらにデフォルメして、独自の理想の器となっているのです。
古九谷などは、実物は経年のためか白地の部分がややくすんでいますが、絵の中では目にも鮮やかな真っ白の地が、緑や黄色の他の釉薬の色をよりいっそう引き立てています。
形の丸み、そのカーブの感じなども、ものすごく量感がでているのです。

さらに着物好きには、絵の中の人物の着物を観るのも楽しいものです。
紅い紗の薄物・・・夏に赤って・・?と思うけれど、昔の着物には意外に夏の薄物で黒×赤なんて色使いがよく見られます。
白地に紺の博多献上の帯の粋な着こなし、舞を舞う芸妓さんの黒の江戸褄の裾模様の見事さ、舞妓さんの友禅の文様の豪華さ、などなど、絵の中の着物やその取り合わせ、着こなしにも見入ってしまいました。


この方は一時期、マティスに傾倒したらしく、画風がいきなりマティス似になる時期があったようです。
暗く沈んだ青や灰色が画面を覆い、人物には黒く太い輪郭線を入れています。

しかしその後、また元の作風をさらに昇華させた方向へと戻っていきます。

出口の年表を見ると、幼少の頃にお父さんが仕事で満州に行ってしまい、その後はお母さんが女手一つで苦労して子どもたちを育て、一家の生計を担っていたそうです。
経済的には苦労したようですが、22歳で女子高等師範学校を総代で卒業したとか。
その後は当時の女性の数少ない職業の一つであった教師(非常勤の美術講師)となり、お母さんの看病と教鞭、絵の制作など、時間的にも厳しい生活であったようです。
30歳で院展に初入選した後は落選知らずだとか。

ほんとうに力のある人というのは、経済的に苦しくてもそこから自ずと抜きん出てくるのだなと感じ入りました。

上村松園も、やはりお母さんが葉茶屋さんを営んで、娘2人を育てています。
決して豊かではない境遇から、歯を食いしばって一心に努力して、男社会の中から絵の実力で、浮上していったようです。

世界のオザワ(小澤征爾氏)も、ピアノが買えなかったけれど、もらったピアノを遠方から家までリヤカーで引いて運んできたのだとか。
音楽の勉強で渡航する際も、船賃のほか所持金はわずかで、交通費もないのでバイクを積んで船に乗り込んだそうです。

ところでこの方、43歳で30歳年上の名僧・小倉鉄樹と結婚、6年後に夫が亡くなっています。
芸術家の女性には、父親くらい年が離れた人と結婚(or恋愛)するパターンが多いように思います。
同じ芸術ジャンルの師匠的な存在の人がその相手であることが多いようですが、この方の場合はちょっと違う・・?

上村松園さんを描いた「序の舞」(宮尾登美子著)のように、この方の伝記などがあれば読んでみたいと思いました。


参考:TV東京「美の巨人たち」 





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Last updated  2005/06/16 09:02:18 AM
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