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「やめて、流さないでぇえええーーー!」
スネグチは叫んだ。 …それはもうほとんど、泣き叫んだのだった。 彼女はいつも、夜八時頃に子供を産み始める。 この出産は約15分かけて行われるが、そのためには、オケロフとナラオの協力が欠かせない ナラオが子供達に体温を与え、オケロフがその子供達を抱きとめるのだ そして、今の時刻は11時40分 毎日必ず訪れる、日常的な別れの始まりだった ジョンを始め、ナベシキも、ラシブも、オッケーも、これには慣れっこになっていた ただ一人、スネグチを除いて…… 「イヤ……私…堪えられない…………」 スネグチは、冷水をピチョピチョと垂らしながら、クビを背けた 「いい加減にしろよ……」 あきれ顔のオケロフが言った 「僕が流しているのは、ただの水だろ?……君の子供じゃないよ」 スネグチには、残酷な一言だった 「確かにこの子達は空から来たわ…。でも私はね、この子達を産んでいるのよ!」 「バカ言ってるよ……しかも、『この子達』だって?水っていうのは、数えることができないんだよ。知らないのかい?」 スネグチは、クビをガキュガキュと振った 「分かってるわよ……でも、この子達は私の子供だと思うの………。だって、私の中から産まれてきてくれるんだもの…」 そのとき ゴキュッ っという音と共に、オケロフの穴から最後の水が抜け落ちた 「空から降ってきたって言うんだな……」 オケロフはつぶやいた 「だったら簡単な話じゃないか。大体、その水がお前の子供ならどうして俺に預けるんだ。捨てられるって分かっているのに」 「そんなの……TOTOの設計者に聞きなさいよ!私だって、捨てたくて産んでるんじゃないのにーー………!!」 オケロフはため息をついた 「だから、どうして産むのかって聞いてるんだよ……。捨てたくないのなら、どうして水を流すんだ?」 オケロフは「それはな」と、スネグチの答えを遮った 「水は絶対に流れていくものだからだ。お前は『捨てる』なんて言い方をしたが、実際はそうじゃない、むしろ空から降ってきた水を俺に産み落としたあと、海を産み出しているんだ。」 スネグチは、冷えた鉄パイプのように笑った 「バカ言わないで…分かってるのよ。私があの子達を産み出すのは結局、人間の汚いものを海に流すためよ。海を産む?あんたバカァ?」 オケロフはかまわず言い続けた 「それでもお前の流した水は、必ず海へ行く。たしかに汚いかもしれないが、一種の微生物には歓迎されるんだ。いいか、歓迎されるんだぞ!!?」 スネグチはもう冷え切っていて、ただ黙っていた 「いつの日かお前の流した水は、お前だけのものではなくなる。お前が流した水を『子供』だと言い張るなら、その時の水は『大人』になるはずだ!…だからお前が産んでいるのは………」 スネグチは言った 「なんでもかまわないわ。私は、私の子供がいなくなるのが悲しいだけよ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.04.28 23:53:48
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