待望!ついに若杉/ケルン放送交響楽団のマーラー/交響曲第9番の東京ライブがCDで発売になった。
小生の思い出深い演奏会のひとつである。地方に住んでいたため、その地で若杉/ケルンRSO(放送交響楽団。現在はWDR)でベートーベンの英雄交響曲を聴いた。その時の演奏がもの凄く良くて、感涙極りだった。こんな演奏は滅多に聴けないといえる名演奏だった。
そのコンサートの3日後ぐらいだったと記憶するのだが、東京でマーラー/第9交響曲のプログラムがあり、いてもたってもいられなくなり馳せ参じたのを覚えている。
この時のケルンRSOのオーボエ奏者に宮本文昭が主席オーボエ奏者として演奏していた。英雄SYMでも驚いたが、彼のオーボエの音色と音そのものが突出して美しく響いていた。この人ただものじゃないと確信したのも、このころだ。既にアルバムもソロで発売になっていて、聴いてはいたが生で聴くともっと驚いた。
マーラーの音楽は、小生の音楽構造の中核をなし、自分の子守唄で毎度の食事のように聴いてきた。あらためて今回発売になった若杉/ケルンRSOの1983年の東京ライブを聴き直して眼前に当時の音楽の響きが彷彿した。一言ではいえないが、音楽が丁寧で真摯な姿勢と躍動と深遠というものを若杉/ケルンから感じ取ることが出来る。弦の美しさと音像定位の骨格が確りした台形の響き。そういう演奏である。旋律の運びの美しさ、まるで呼吸に近い感覚である。何というオーケストレーションの美しさだろう。生で当時聴いたその感動と比べれば、ディスクに納まった音楽は世界が少し萎縮する。これは致し方ない事だ。今回発売になったCDは83年の2度目の来日のコンサートだが、この演奏会を聴いた人たちの間で伝説化するほど、語り草になつている。格言う小生も語り草の一員である。
今回の発売は小生としては万感の有難さを禁じえない。マーラーがお好きな方には是非ともオススメしたい。
若杉さんも一昨年2009年の7月に他界し(享年74歳)、真摯な音楽家の演奏を聴く事が出来なくなったのは残念至極である。