アサヒビール(株)【東証1部:2502】 - 飲料、食品、海外を「次の成長事業」にする
アサヒビール(株)【東証1部:2502】荻田伍社長おぎた ひとし 1965年、九州大学経済学部卒、アサヒビール入社。主に営業畑を歩み97年取締役福岡支社長。常務執行役員関信越地区本部長、専務執行役員同、アサヒ飲料執行役員副社長、同社長などを経て、06年3月、アサヒビール社長に就任。67歳。 飲料、食品、海外を「次の成長事業」にする-- 2009年1~3月期のビール類課税出荷数量は、四半期ベースで2年ぶりに首位陥落です。 私たちの商品や企業戦略が足りなかったためだと、素直に結果を受け止めています。昨年後半から経済の先行き不安が強まり、価格と価値の関係が変化し、消費者がビールや発泡酒から価格が一番安い新ジャンルに流れてしまった。 それは数字に端的に表れていて、昨年のビール類構成比はビールが53%、発泡酒が23%、新ジャンルが24%だったのに対して、今年1~5月はビールが49%、発泡酒が22%と下がり、新ジャンルは29%と構成比が上がっています。私たちも2月に新ジャンル「アサヒオフ」、3月に発泡酒「クールドラフト」を出したものの、その効果は1~3月には間に合いませんでした。 発泡酒では、07年に発売した「スタイルフリー」、新ジャンルでは、昨年発売した「クリアアサヒ」が一定の評価を得ていると考えています。今後、トップブランドをどう育てるか、がカギになります。-- 足元の市場の動きは。 年初における業界全体の出荷数量予測は、前年比2~3%減でした。ただ、景気は底打ちしたといわれており、3、4月は前年実績を上回りました。5月は3カ月ぶりに前年割れとなりましたが、新商品の投入や販売促進に力を入れたことなどにより、健闘しているのではないかと考えています。-- グループは、「食と健康」を事業領域とし、お客様に喜びと感動を提供する会社を目指しています。 私たちは現在、お酒がメインの会社です。実際に、08年12月期(連結)の売上高1兆4627億円のうち、約7割を酒類事業が占めています。しかも、その8割超がビール。今後、人口減少などによりお酒の消費量が減ることが考えられるとしても、売り上げの大きい酒類事業をより磐石なものにしなければなりません。そのためには、改めて、ブランドを強化する必要があると考えています。さらに、成長性を考えたとき、「次の事業の柱」として飲料・食品事業と海外事業が重要になります。-- ブランドとは何ですか。 商品ブランドと企業ブランドの2つあります。この2つはお互いに関係が深く、商品ブランドが弱くなれば、企業ブランドも衰弱してしまいます。その逆もあります。 たとえば、「スーパードライ」は1987年の発売から22年になります。かつて、発売5年目ぐらいに一度、他社が新商品を発売したことで売り上げもシェアも落ちてしまいました。そこで、「鮮度」という新しい価値を加えてブランド強化を図ったところ、一気に消費者に受け入れられるようになりました。 ただ、これからも「スーパードライ」がこのままお客様に飲み続けられるという保証はありません。ブランド価値をより高めるため、47都道府県と一緒に選定した、地域ごとの環境や重要文化財などの保護・保全活動に対して、「スーパードライ」の売り上げの一部を寄付し、地域社会の活性化を応援するという仕組みを始めています。企業ブランドを高めることで、商品ブランドの価値も上げていくということになります。 海外売り上げ3%から10%に-- 飲料・食品薬品、海外事業の売り上げは。 飲料は売り上げ約3000億円、食品薬品は800億円ぐらい。これを、なるべく早く飲料は5000億円、食品薬品は3000億円程度にしたいと考えています。 海外では今年3月、中国の青島ビールの株式を約20%取得したことで、展開の拡大を図っていきます。また、韓国では、04年にロッテグループの酒類輸入販売会社に出資。タイでは、02年からビール最大手ブンロートグループと提携して「スーパードライ」を現地生産し、私たちが販売してきましたが、この4月からブンロートに販売も委託する形に変えました。宣伝なども任せ、より現地化していこうと考えています。飲料では、中国の食品最大手・康師傳と04年に合弁会社を設立して、中国で清涼飲料事業を展開しています。今年は、オーストラリアの飲料会社シュウェップス・オーストラリアを完全子会社化しました。 現状では、海外売り上げは433億円で比率はまだ3%程度。アジアを中心にした一連の展開で現地に根付くようにしていき、これも早い時期に2000億円規模、比率で10%に引き上げたいと考えています。-- 5月、「三ツ矢サイダー オールゼロ」を発売しました。 カロリー、保存料、糖質がすべてゼロの新商品です。三ツ矢サイダーは、発売120周年(03年)を機に、04年から人工のものではなく、果実・植物由来の原材料から抽出した香りだけを使って商品を製造しています。今回は、これに3つの「ゼロ」を加えました。おかげで、三ツ矢サイダーはこのところ、年2ケタで伸びています。【Interviewer 週刊エコノミスト編集長・内野雅一】毎日新聞 - 2009年6月24日