住友林業(株) 【大証1部:1911】 - 成長戦略
■世界の“森林メジャー”狙う 木造戸建て注文住宅市場で首位を誇る住友林業(株)【大証1部:1911】。しかし、住宅市場の冷え込みなどにより、2009年3月期は2期連続の減収を見込む。こうした中、同社は長期的視野に立った事業戦略を重視しており、17年度を最終年度として進行中の長期経営計画「プロジェクト スピード」では、海外や不動産、リフォームといった成長分野の育成に力を入れている。矢野龍社長に狙いを聞いた。(会田聡) --長期経営計画を策定した経緯は 「米サブプライムローン問題が発生して以来、『100年に1度の危機』といわれるが、景気悪化の兆しは数年前からあった。このため、3年前に役員や中堅社員らを集めて合宿し、50年後の住友林業がどうあるべきかを集中的に議論した。その結果、危機を生かして社員の意識改革を促すとともに、新たな収益事業の創出を目標に掲げた『プロジェクト スピード』を、07年に策定した。17年度の売上高は、07年度比で85.7%増の1兆6000億円、経常利益は10倍の800億円を目指す」 ◆BRICsに事業拡大 --新たな収益事業とは 「現在は新築住宅と木材・建材の製造販売が収益の大部分を占めている。ただ、日本は人口が減少傾向に転じており、国内市場が縮小するのは必至。従来のような成長は期待できない。このため米国や韓国などで展開している海外事業を強化し、成長市場であるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)へも領域を拡大させたい。ただ、石油価格や為替動向など懸念要因があるので、リスク管理体制の整備は重要な課題だ」 --不動産とリフォーム事業もカギを握る 「これまで不動産開発とは一線を画してきたが、今後の住生活のあり方を踏まえた場合、住宅だけではなく、周辺の住環境も含めた開発に注力する必要があると考えた。すでに高齢化時代に対応するため、静岡市葵区にあった建材工場の跡地を活用。介護付き有料老人ホームや医療施設、公園などを併設した複合施設の開発に着手している。このほか賃貸管理など、景気に左右されない分野を手掛けている。ただ、競争が激しい高層マンションなどを開発するつもりはない」 「リフォームは、すでに20万戸を超える新築住宅の施工実績がある。住宅は20年くらい経過すると子供が自立したり、居住者が高齢化したりして、リフォームや建て替えを迫られる。住友林業が建築する伝統的な木造住宅は柱と、はりがある軸組工法のため増改築を比較的容易に行える。今後は中古住宅を買い取り、リフォームして再販売するなどの仕組みも考えている」 --組織改革も進めている 「住友林業の中核となる山林環境本部を中心に、木材建材、住宅、不動産、海外という4事業本部体制とした。山林環境本部は国土の1000分の1に相当する約4万ヘクタールの社有林を管理しており、林道の整備や枝打ち、伐採、植林などを手掛けている。収益につながる分野ではないが、地球上で唯一ともいってもよい再生可能資源である木材を活用するという、住友林業の品質の高い事業を可能にしている」 ◆国産材の使用7割に --森林を保有するメリットは 「木材はその国の気候・風土に適したものを使用するのが一番いい。例えば、国内の新築住宅事業では、主要構造材における国産材の使用比率を70%まで引き上げる予定だ。社有林は温室効果ガスを吸収するので環境共生にも対応している。ただ、世界の森林会社と比べれば、住友林業の社有林はまだ規模が小さい。これからの企業は環境問題に真剣に取り組まなければ生き残れないため、30~50年後には世界の“森林メジャー”になるという大きな志を持ち、今後は植林のほか、南米・北米など有力な森林の買収によって森林資産を増やしていきたい」 ◇ ≪メモ≫ 住宅業界は国内市場の縮小傾向に加え、景気後退による消費者心理の冷え込みで厳しい状況に置かれている。木造注文住宅と木材・建材事業という両輪で堅実に業績を伸ばしてきた住友林業も、昨年10月に2009年3月期の業績予想を下方修正した。 ただ、販売用不動産などリスクの高い資産や借入金が少なく財務体質は良好。資金環境の悪化に苦しむ他企業を尻目に長期的な視野での事業育成に取り組んでおり、今後の成長が期待される。フジサンケイ ビジネスアイ - 2009年1月12日バックナンバー積極的企業買収で世界の山林メジャーに - 2008年10月01日関連サイト住友林業住友林業 - Wikipedia株価Yahoo!ファイナンス - 1911.o1911 住友林業(株) 住友林 NIKKEI NET 株価サーチ株価 1911:住友林業 - Infoseek マネー株価ジャッジ | 住友林業 (1911)