出光興産(株) 【東証1部:5019】 - 成長戦略
【プロフィル】天坊昭彦 てんぼう・あきひこ 東大経卒。1964年出光興産入社。出光ヨーロッパ社長などを経て、91年取締役。常務、専務を経て2002年から現職。今年5月から石油連盟会長も務める。69歳。東京都出身。 ■「脱自前」他社と協業も 出光興産(株)【東証1部:5019】は2011年に100周年を迎える。節目の年を控え、09年度から3カ年の第3次中期計画の策定が、今まさに本格化している。天坊昭彦社長に中期計画策定の方向性と、これからの成長戦略について聞いた。 --第3次中期計画の策定に向けた考え方を聞きたい 「15~20年先の企業のあり方をイメージして、『こういう会社にしよう』という部分を考えて作ろうとしている。今は世の中が大きく変わる時期。それだけに、過去の延長線上で物を見ていてもだめだ。社内では『もう少し遠く(の時期)を見据えて、取り組みを考え直そう』と話している」 ◆高付加価値品で差別化 --具体的なポイントは 「事業分野を本業の石油関連を扱う基盤事業、油田開発などの資源事業、新規事業にあたる高付加価値事業とに分けているが、基盤事業については国内市場が一段と縮小する中、位置づけをどうしていくかが最大の課題だ。十分な競争力を確保するため、一層、効率化を進めることになる。精製施設などコンビナートの連携、例えば他社との協業の実施も柱になるだろう」 「石油化学は需要が冷え込み、収益マージンがなかなか出ない。汎用品をいかに減らし、差別化できる高付加価値事業を早くやることが必要だ。高付加価値事業は投資順位を選別し、場合によっては他社との協業も進めるなど、個別に判断していく必要がある。資源事業はバブルがはじけた状況なので、資産購入は若干慎重に考えた方がいい。地道に鉱区をとって探鉱を進めていく」 --出光は独自路線のイメージが強かったが 「従来、新しい事業の計画は基本的に単独で進めていたが、世界的な金融不安で景気が低迷する中、場合によっては競合他社や補完しあえる企業とのアライアンスを考慮に入れる必要がある。競争を減らし、投資の削減にもなる」 --石油元売りの業界再編は 「石油業界はまだ企業数が多い。再編も含めて、向こう10年である程度のカタがつくとみている。今は精製能力が日量500万バレル以上あるが、国内の実需は日量450万バレルで差が大きい。今後、需要は毎年、日量10万バレルずつ減る中で、需給の開きはさらに大きくなる。この1~2年でかなり整理されることになると思う」 --国内市場が縮小する中で、どういう成長戦略を描くか 「2030年になっても、1次エネルギーの4割は石油。国内で物を売る基盤が、失われてはならないので、販売店と一緒に販売のネットワークは維持していく。競争は厳しいが、これが事業の核だ。ただ、全体の需要が縮小するので、失われる部分は海外で広げる。ベトナムで拠点を作って、どう展開していくべきかを製油所建設と並行して検討していきたい」 ◆農業など成長分野育成 --農業分野など新たに成長が期待される事業分野もある 「エネルギーや食料は国の安全保障の基本。だが、エネルギーは9割を輸入に頼り、食料の自給率も4割しかない、これでは自立した国家といえない。エネルギーと食料の自給率向上は極めて大事な課題だが、われわれは両方を手がけており、事業を推進していく」 --10年先を見た場合、企業としてどういう姿が望ましいか 「石油と石化事業が全体の9割超を占めているが、もう少し比率を変えた方がいい。資源事業と高付加価値事業を合わせて、半々の比率にしたい。ただ石油は事業規模が大きいからなかなか難しい。エネルギーが一つの柱であるのは間違いないが、エネルギーの中身は多少、入れ替わるかもしれないと思っている」(内田博文) ◇ ≪記者の目≫ 日本経済は乱高下する資源価格に振り回されている。一方、続発する偽装問題や生産管理の不備など、食に対する国民の不信感は増すばかり。天坊社長が指摘する「国の安全保障の基本」は、大きく揺らいでいる。出光は固体電解質のリチウム電池など再生可能エネルギーを効率的に使う技術開発を急ぎ、微生物農薬にも取り組んでいる。こうした高付加価値事業を積極的に展開することは、安全保障対策に大きく貢献するとともに、出光の成長戦略を支えることにもなる。フジサンケイ ビジネスアイ - 2008年11月19日関連サイト出光興産 - IDEMITSU出光興産 - Wikipedia株価Yahoo!ファイナンス - 5019.t5019 出光興産(株) 出光興産 NIKKEI NET 株価サーチ株価 5019:出光興産 - Infoseek マネー株価ジャッジ | 出光興産 (5019)