藍野家の日常

母が、クリスの産箱の床に敷いたバスタオルを交換した。
出産後、仔猫たちにつきっきりだったクリスにも徐々に余裕が出てきたようで、
しばらくの間産箱から出て、フローリングの床に横になってほてった体を冷やしたりしている。
クリスが長時間産箱から離れたときにバスタオルを替えようと、母が次のバスタオルを
折りたたんで用意し、機会をうかがっていた。
すると、産箱から出たクリスが、出産前から少々折り合いの悪かったバーニィと、
隣室で小競り合いを始めた。
今までの様子から、しばらくは睨み合いが続くだろうと、この間に母がバスタオルを交換した。

眠っている仔猫たちを落とさないよう、ゆっくりとバスタオルをたぐり寄せる。
仔猫たちと今までのバスタオルを産箱から出し、新しいバスタオルを床に敷く。
それから、仔猫たちを産箱に戻した。クリスが戻ってくる前にと、急いで戻す。
本当は、この機会に体重を測ってみたかったが、やめておいた。
産箱に戻しながら、性別を見てみようとしたが、まだ小さいのでよくわからなかった。

小さいとはいえ、仔猫たちはずいぶん大きくなった。
文字通り、日に日に大きくなっていっているのが、体重を測らなくても見て取れる。
順調ならば、今週中には目が開くのだろう。
どうか、ステラの分まで元気に育っていって欲しい。

バーニィを一蹴したクリスが、産箱に戻ってきた。
床の臭いも変わってしまっただろうし、仔猫たちに人間が触っていることでクリスが
気を損ねないか心配したが、クリスは普通に産箱に戻り、仔猫たちを舐めていた。
安心した。

取り出したバスタオルの上に、仔猫たちの体から取れたへその緒が落ちている。
しばらく前から、産箱の床に落ちていることに気づいてはいた。
へその緒は、生後3日ほどで、仔猫の体から取れるという。
この子たちも順調に成長している証拠だろう。

手にとってみると、感慨深いものがあった。
長さ数センチの干からびたへその緒。
これが、クリスの胎内で、仔猫たちのいのちを育てていた。
とても大事なものを手にしていると感じた。

母は、陶器の小さな箱を持ってきた。
中には、猫の乳歯がひとつ納められている。
アルの最後の乳歯だ。
引き取ったしばらく後、水入れの底に沈んでいるのを見つけて、とっておいた歯だ。
この箱に、へその緒も一緒に納めることにした。

4本のへその緒を、箱に納める。
ステラの分のへその緒がないことが悲しいが、ステラのへその緒は、クリスとの絆の証に、
ずっとステラが持っているべきなのかもしれない。
どのへその緒がどの子のものかはわからないが、いつか仔猫たちが里親さんのもとに
巣立っていった後も、我が家で生を受けた記念に、大事に取っておきたい。

ミーツ・ミネ・ミチーノ・ミニーノ。4頭の健やかな成長を祈ってやまない。