憧れの席とツガイの問題。
日本エアシステムのMD-81で使われているエンジン内部の部品に、亀裂が生じているという。それもかなりの数に及んでいることから、どうもこれは設計段階のミス、などと報じているが、どうだろうか。日本の国内における、航空機による移動は世界でも稀なほど多い。同じ機体を1日中、日本のあちこちに飛ばす。機体は飛んでいるほうが効率はいいからだ。ハブとなる空港から地方空港まで行って、40~50分くらいの時間でまた戻っていく、ということを繰り返す。MD-81は確か85年頃に導入されているから、年数も経ってきている。機体そのものの設計はDC-9-81と同じで、エンジンを換装し内装や計器類をかえたものがMD-81シリーズだ。つまり古い(設計の)機体に(新しい)強いエンジンを搭載していることになるので、ガタとしては稼動部分の多いエンジンに負担がいきやすい。機体とエンジンとは、相性というものが絶対にあると私は思うのだが、貧乏な会社だと予備のエンジンをあまり持っていないから、機体の検査、エンジンの検査の年数のズレによりそれまでと違うツガイになる場合がある。馴染む、という言葉があるが、これは機械モンであってもそうで、電車でもそうなんだが動力となるものとボディーは男女のような相性がある。その組み合わせを途中でかえたりすると、大体不具合が生じる。「あたしこのヒトと仲良くやっていたのに、どうしてどうして・・・ヨシオさん!」「ああ、アイツとなら最高の仕事ができたのに・・・ユウコー!」「ヨシオさんあたしを忘れないで!」「ユウコ!」「ヨシオさん!」ひっくひっくと涙を流しながらも、強制的にペアを変えられてしまったヨシオとユウコ、じゃなかった。なんでこうなるのだ。他人が使い親しんでいる自転車って、ちょっと違和感があるでしょう。それと同じで、人間なら適応してくるのだがエンジンやボディーはそうはいかず、最初のペアに合わせて不具合が出て修復をしたりしているから、実は同じ製品でも別物のような変化を遂げていく。このツガイの関係を途中で変えるものだから、つまり「そのボディーに合わせた変化をしていたエンジンが、違うボディーに取り付けられる」事になるから、不具合が生じるのだ。MD-81に使われているエンジンはJT8Dシリーズで、世界のベストセラーに間違いなく入る名作エンジンである。自衛隊でもC-1がこのシリーズのエンジンを使っている。MD-81も機材としては世界で2番目に多いのではないだろうか。1番はB737シリーズだ。そしてMD-81は不憫な飛行機で、ダグラス社がボーイング社と合併したものだから、もともとボーイング社にあったB737と機材の狙っていたマーケットが完全にダブることから、消滅されられてしまったのである。どちらも150席程度で短距離、というマーケットを狙っていたのだ。だが外見は全く異なっており、私はT尾翼ですらりとしたボディーのMD-81のほうが好きだ。魚でいうとまるでサンマそっくりなのだ。しかし消滅したので、今後新しいシリーズは出ない。私が子どもの頃、唯一実機で握ったことのある操縦桿がこのシリーズの機体だった。そのとき座った席は、今も憧れのままだ。