強欲の果て
今日土曜日のアメリカのメディアは今朝ニューヨークのマンハッタンの高級住宅で起きた一人の男性の自殺のニュースを伝えていました。マーク・マドフと言う46歳の男性です。彼は二年前に巨額金融詐欺で逮捕されたバーナード・マドフの長男でした。その住宅は有名なロック・ミュージシャンであるジョン・ボンジョヴィも住んでいる高級アパートでした。天井から吊るした犬用の引き紐で首を吊っていたそうです。別室には二度目の奥さん(離別中)との間に生まれた二歳の息子がまだ眠っていたそうです。ご記憶の方も多いと思いますが、バーナード・マドフは大掛かりな金融ねずみ講を仕組み、被害額500億ドル(当時の円換算では約6兆円)にも上る投資被害を引き起こし、現在は150年の刑期でノースカロライナ州にある刑務所で服役中です。彼はニューヨークのみならず世界中で知られた金融界の有名人でした。スチーブン・スピルバーグ映画監督や有名スポーツ選手などの個人投資家から銀行や機関投資家などが騙され、莫大な損害を受けました。日本の投資銀行も被害者リストの中にありました。その損害を少しでも取り戻そうと多くの民事訴訟がバーナード・マドフの二人の息子やその相続人に対しても起こされています。バーナード・マドフは捕まる前に集めた投資金の中から2億ドルを自分の私用に振り向け、息子のマーク・マドフもそれらの流用金(給料やボーナスや経費として支払われた)の中から恩恵を受けた筈だとして全財産の没収を求められていました。働くべき職場も見付かりませんでした。豪華で優雅な生活から一転して失望の日々が続いていました。被害者からの訴状では自分の資産のみならず、まだ幼い二歳の息子に相続されるべき財産も没収の対象とされていた事等で精神的ショックを受けていたと言われます。マーク・マードフが自殺した今日はちょうど二年前に父親が逮捕された日でした。長男の自殺を牢獄の中で聞いたバーナード・マドフはどんな思いでしょうか? 金の力に溺れ、欲を拡大させた結果が自身の刑務所暮らしと長男の自殺に繋がりました。強欲の果てとは言え、誠に悲しいものです。二年前の事件も今日の事件もニューヨークの上流社会に住み、長年親しい付き合いをして来た人々にとってもショッキングな出来事のようです。(終り)