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偏屈老人独言

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2019.08.21
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カテゴリ:コラム記事
作家の曽野綾子さんが、日経夕刊(2009年3月11日)で語っておられた「日本で貧困 ありえない」を読み、頭では分かっていた積もりでも、「貧困」について真剣には考えていなかったことを思い知らされ、反省頻(しき)りです。
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 日本でも最近、貧困が取りざたされるようになった。しかし、私はいつも違和感を覚えずにはいられない。長年、アフリカやインドで見てきた貧困の実態と、日本のそれとはあまりに差があるからだ。
 もちろん人にとって何が幸福で不幸かは主観が決める。それぞれの社会にはおのずと平均とされるレベルがあり、そこに到達しないとみじめになったり、社会から脱落したと考えたりするのも当然だ。
 それでもなお、真の貧困とは何かを日本人はもっと知るべきだと思う。弱い者への理解は、他者への優しさと想像力を養う。同時に私たち自身が弱い者となったとき、生き延びる知恵を与えてくれる。
「貧困とは、その日、食べるものがない状態」と私は定義している。日本には世界レベルでいう貧困な人は一人もいない。コンビニに食品があふれ、生活保護が受けられれば、職が見つかれば食べられる、という状態は真の貧困とは呼ばない。本人だけでなく親類中あるいは村中どこを探しても食べる物がない状況が世界レベルの貧困だ。
 ・・・
 地球上には、解決不能な貧困と飢餓を抱えた地域が山とある。それに比べて日本の貧困は解決可能だ。現状は適切な対策が講じられていないのであり、絶望することはない。
 ・・・
 日本人は道路にお金がいる、ないから造れないという。それは金持ちの貧しさ。お金がないなら、さし当たり舗装することはない。雨が降れば水はたまるが、定期的に整備して砂利をまけば使える道路を私は見てきた。子供たちには時々、土の道を裸足(はだし)で歩く体験をさせたらいい。弱い人を思う心も育つと思う。
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確かに、終戦直後の飢餓状態、停電続きを経験した愚生としては、曽野さんの仰有られることも分からないではありません。あの頃、我が家は東京の平均的なサラリーマン家庭でしたが、碌に食べる物がなく、空腹のために身体を動かすのも億劫なくらいの思いも経験しました。食べ盛りの小学生の身でです。その頃の目で見れば、そして、曽野さんの定義を当て嵌めて見れば、今の日本には貧困はなく、あるのは、格差と無為無策です。
今必要とされるのは、
「国を有ち(たもち)家をを有つ者は、寡(すく)なきことを患(うれ)えずして、均(ひと)しからざるを患う。
 貧しきを患えずして、安(やす)からざるを患う。
  蓋し均しければ貧しきこと無く、和(やわ)らげば寡(すく)なきこと無く、安ければ傾くこと無し。」
 (論語季子第十六)(吉川幸次郎訳)
の精神を世界の視点で持つことでしょう。そして、世界の貧困について主に祈り、仮令どんなに小さなことであっても、何が出来るかを捜し求めつつ、私たち一人一人が行動を始めることです。
(曽野さんは、1987年、「海外邦人宣教者活動援助会」を設立し、神父、修道女に直接、募金を届ける活動を続けておられます。)---





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Last updated  2019.08.21 03:15:07
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