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テーマ:心にのこる出来事(94)
カテゴリ:冒険少年の憂鬱
続きものですので(1)からお読み下さると嬉しいです。
カラコロカラコロ、スーゥっと、扉が開いた。 ー何なのだ。どうする気だ! 彼は、ニタニタしながら、脱衣所に入ってきた。そしてなんだかんだと執拗に話しかけてくる。何とはなしに頷いたりしながら話を合わせていたが、なんだか話が堂々巡りを始めているのに気が付いた。 ーまずい、彼のペースに巻き込まれそうだ。 「まだ寝ないでしょ、ちょっとお酒でものまない?」 もう、このあたりから少しおかま口調になっている。 むげに断って、部屋に帰るわけにもいかない。断ってしまえば良いじゃないかと思うだろうが、そうはいかないのだ。この世界にも、いじめの様なモノがあり、この1ヶ月でさえそう言う現場を何度も見てきたからだ。 ーどうしよう。一緒に飲むぐらいならかまわないが、それ以上のことはゴメンだ。何処で飲むかが重要な事だった。役者さんは個室の場合が多いので、彼の部屋だけは避けたかった。 「ここのロビーでだったらいいですよ。もう誰もいないし、大丈夫でしょう。」 「じゃ、部屋からお酒と氷を持ってくるからね。チョット待っててちょうだいね。」 相変わらずおかま口調だ。 彼は、魔法でも使ったんじゃないかと思うくらいにあっという間に戻ってきた。 「ロックでいい?」 「はい」 最初、話はどうでもいいような世間話だったのだけれど、次第に自分の男の好みみたいなことになって来た。そんなこと聞かされても返事に困るのだ。 ーどう対処したらいいんだ。この人の魂胆は見え見えだし、しかし、すかしてばかりだと、この人も満足できなくて、変な行動に出ないとも限らない。 しかし、こんな経験もそうはないだろうし、元来の好奇心旺盛な気質が、"チャンスだいろいろ話を聞かせて貰え"って、悪魔のようなささやきをしてくる。 それはそうかも知れないと、覚めた自分を感じた。 例えば、京都の街で、おかまやホモが多い場所、そんなところが有るのかどうか知らないが、とりあえず訊いてみたり、どんな事をするのか、どんな風にして、いつからそんな感情が有ることを自覚したのか、そして、どのようにしてそう言う相手を探すのか、等々思いつく限りの質問を浴びせかけたのだった。 彼は、それらの質問に対して丁寧に詳しく答えてくれた。それは本来知る必要のないような事柄なのだろうけれど、聞いてみると意外と面白い話が多いことに驚いた。 聞いていくうちに感じた事は、男と男の関係に於いては、ある種特殊な役割みたいなモノがあり、それを出来る限り尊重する事が大前提で有るかのようなのだ。これは女同士でも同じなのかもしれない。そういう風に考えるとその根底にあるものは、どんなモノをも受け入れる「やさしさ」のようなものが必要で、それがない事にはそう言う関係は成り立たないんじゃないかと思った。 彼は真剣だった。ユーモアにも富んでいた。そして何よりナイーヴだった。自分が知っている世界とは別の世界だと思っていた事が、それ程かけ離れた事では無いようにに感じたのも事実だ。当時のボクにはそのことは旨く説明できなかったが、心のあり方感じ方が少しは広がった気がしたのは確かだった。 2時間ほど彼とそうやって喋っていたと思う。そしてそれはお開きになった。二人でテーブルを片付け、部屋に戻る途中、ボクはトイレに行った。 「ちょっと、トイレに行ってきます」 「いいよ、待ってるからね」 待ってる必要なんか無いのにと思いながら、かなり酔っているのが自覚できるほど、フラフラとトイレに入っていった。用を足している途中、急に何かに羽交い締めにされたように動けなくなった。 「ボクが持ってて上げるからね」 そういって、彼は後ろから羽交い締めのような形で、ボクの股間に手をあてがった。 金縛りにあったように、身動きが取れなかった。 どれぐらいの時間が経ったのかはわからない。おそらくそれ程長い時間ではないのだろうが、ひどく長い時間に感じた。 「け、結構ですから・・・」 なんとかそう言って彼を振り払うことが出来た。 「おやすみなさい」 とだけ告げて、ボクは自分の部屋に戻った。 やはり、理解することと受け入れることとは別ものだった。 この話には、まだビックリするような続きがあるのですが、そのことは、この旅の番外編ででもお話ししたいと思います。 徒然に、つづく、、、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 22, 2015 04:45:36 PM
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