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カテゴリ:冒険少年の憂鬱
今では、名画座という言葉さえ死語となりつつある。「京一会館」はそんな名画座のひとつだった。創業が1960年、1988年に閉館するまでひとつの文化とさえ言えるほどの存在としてあり続けた、一風変わった映画館だ。場所は京都の上、左京区の一乗寺の商店街の中にあった。1階がスーパーでその2階が映画館になっていた。
小津、黒沢、溝口の監督特集を組んでみたり、かと思えば、日活ロマンポルノの秀作を一挙10本立て、何て言うとんでもない企画をしたりと、映画好きにはたまらない名画座だった。 土曜の晩など、映画館のバイトが終わってからしょっちゅう通わせていただいた映画館だった。 「京一会館」へ出向くときは、歩いて行くのが常だった。節約の為と言うわけではなく、それには理由があった。 先ず、河原町界隈で安くて美味しいワインを購入し、鴨川の川岸を歩いて北上する。そして映画館の近くでワインを川に沈めて放置しておくのだ。その足で、上京区や左京区界隈の店を見て回るわけだ。本屋を覗いてみたり、小物雑貨の店を覗いたりして時間をつぶす。そして最後にいつものデリカテッセンで、ハムかローストビーフ、珍しいチーズなどを買い込み、ワインを川から引き上げ、映画館へ向かうのだ。 デリカテッセンがお休みの時は、肉屋のビーフコロッケを買い込む。このささやかな贅沢はバスに乗って、映画館に直行することよりボクの満足を保障してくれる最良の方法だった。 京都の上の方(京都は北の方を上といい、北の方に行くことを上がるという)は。現在ではお洒落な店が建ち並び、洗練された街並みに変貌したけれど、ボクにとっては昔の方が、所謂粋な街というイメージがしてならない。何気なく輸入食品店があったり、普通の店に高級な食器が陳列されていたりと、生活の楽しみ方を知っている街だったとおもうからだ。 そして、お気に入りの特集を組んでくれている名画座でとろけるようなハムやビリピリ舌をさすブルーチーズなんかをつまみに美味しいワインを楽しみながら、映画鑑賞をする。至福の時である。 今ではレンタルビデオ店で安くビデオを借りることが出来るので、名画座の存在価値は無いのかも知れないが、映画の楽しみ方として場末の名画座と言うのは、ある種特別な意味を持っていたように思えてならない。 思いだしついでにネットで検索して、「京一会館」に付いてのサイトを見つけた。同じような思いを持っている人がいる事に、喜びと時代の流れを同時に感じてしまった。 「京一会館」動画などもあったりして、懐かしかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 4, 2005 12:50:21 AM
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