アラビア書道とその周辺

waaw（ナスヒー書体）


アラビア語にwaawという文字があります。アルファベットの最後から２番目の文字です。
子音の[w]の音や母音の[u]の音の代わりにも使う文字なので非常に頻繁に文章に出てきます。

また、一文字で単語としても使用します。
いちばん良く使う意味は、接続詞の「そして」という意味です。
また、ちょくちょく見るのは、状況の節を導いて、「○○しながら」とか「○○している一方」などのニュアンスを表す時にも出てきます。
それから、クルアーン（コーラン）などでは後ろに属格を置いて、前置詞として「に誓って」という意味があります。まあ、「wa allaahi（ワッラーヒ）」のように使うことがほとんどですが。
アラブ人もこのフレーズを口語で良く使います。
本来、「アッラーに誓って」ということですから、「絶対、必ず、死んでも」ぐらいの強いニュアンスになるはずなのですが、このフレーズが出てきた時は逆に余り信用できません。特に２度も３度も言われた時には気を付けなければなりません。

そして、今回初めて知ったのが、アラビア語の勉強で使用していた、インターネット紙のDar al-Hayaatの見出しに「と一緒に」という前置詞的な意味がある例文でした。アラビア語の先生が少し得意気に鼻の穴を１ミリ程広げて説明されたので、多分この用法はしばらく忘れないと思いますが。
確かにアラビア語－英語辞典のHans Wehrのwaの項目の２の用法にちゃんとその意味が載っています。前置詞的な用法なのに、後ろに対格（目的格）を取るのも変わっています。動詞のittafaqa（と同意する）と一緒に使っている例文が載っていました。

この用法は記憶にない所から、ずっと見落としていたのか、それとも印刷ミスと捉えていたのかも知れません。

ついでに同辞書のwaの項目を見ると、更に更に、もう一つ、後ろの単語を属格にして、「いかに多くの」とか「たくさんの」という使い方も載っています。「何と多くの杯を飲んだことか」というような感嘆文の例文が載っています。さすがにこの用法はまだ見たことがありません（ひょっとしたら見ていたかも知れませんが、記憶にないです。詩などに使う用法かもしれません。

英語でもそうですが、簡単な単語ほど色々意味や用法がありなかなか厄介です。時々こんなことが出てくるのでアラビア語を勉強していると面白くなります。まあ知っている人には常識かも知れませんが。

書道的に言うとwaawの文字はなかなか書きにくい文字です。
頭部分の丸っこい部分は少し筆を浮かせ気味にして“そら豆＋絶壁頭風”に書く必要があります。更に、最大の難関の一つ“払い”が続きます。
一方、なかなか人気が高い文字の一つらしく、書道の作品にもwaawだけをいくつか並べたものもあります。

おたまじゃくしのような、何か日本語の「の」という文字を横にしたような感じで愛嬌があります。外国人にはこの平仮名の「の」の文字は結構人気があるらしく、時々Tシャツに「の」の文字をプリントしたものを着ているのを見たことがありますので、万国共通に愛される文字なのかも知れません。


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