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あい・らぶ・いんそん

再会4

再会4

イヌクはホテルのスイートをリザーブし、そこを拠点として仕事をしていた。

イギリスに本社のある投資会社の役員になったイヌクは、暫くイギリスで

仕事をしていたが数ヶ月前からニューヨークに来て、精力的に仕事をこな
していた。

イヌクの顔は少しやつれてますます精悍さが備わり、業界では「凄腕の奴」

と異名をとるほどになっていた。

「ねぇ、明日ティファニーで買い物がしたいの。」

イヌクの隣で横たわる女が甘えた声を出した。

「好きにしろ」

イヌクは目を閉じたまま答えた。

「ほんとうに?嬉しいわ。」

女が何か話しかけているうちに、イヌクはうとうとし夢を見た。



街を歩いているとショーウインドゥの中のマネキンがイヌクを見て笑って

いる。よく見ると、それはマネキンではなく確かにスジョンでイヌクに向

かって手を振っている。

イヌクは急いでその店に入ろうとするのだが、何故か人混みに押されてな

かなかたどり着くことができない。やっと店に入りカードを出して買おう

とすると「たった今売れました」と冷たく店員に言われてしまうのだった。

イヌクは何故もっと早くこの店に来なかったのかと後悔をし、

「今度見つけたら、その途端に奪ってみせる」

と夢の中で何度もつぶやくのだった。



「ねぇ・・どうしたの?」

女の声で目が覚めた。

「なんだ?」

「うなされていたわ・・」

イヌクは自分の頬に涙が流れているのに気づき、そっと拭った。

「もう・・今夜は帰れ」

女はイヌクを怒らせまいと、言われるままに帰っていった。


「スジョン・・どうした?」

『ごめんなさい・・・本当にごめんなさい』

寝言を言いながら泣いているスジョンを、ジェミンは起こした。

ジェミンの腕の中で眠っていたスジョンが目を覚まし、ジェミンにしがみ

ついた。

ジェミンはしっかりと抱きしめ

「どうした?夢でも見たのか?」

と聞いた。

スジョンはこっくりと頷き、目を閉じた。

「あいつの夢か・・?」

スジョンは黙って答えなかった。

「もう終わったことだ・・忘れろ」

ジェミンは優しく言った。

しかし、スジョンは夢の中でイヌクが最後に行けと手で合図した情景が、

目から焼き付いて忘れられなかったのだ。

「おまえを自由にしてあげたい・・鳥のように」

あの時の悲しげなイヌクの瞳が、幸せであればあるほどスジョンの心に重

くのしかかってくる。

イヌクの心を深く傷つけた罪悪感が、時としてスジョンを打ちのめすこと

に気付くのだった。

「ねぇ・・あなたは本当に、あのとき彼を撃つつもりだった?」

暫く考えてからジェミンは言った。

「ああ・・。あいつも殺しておまえも殺すつもりだったよ・・そして、俺

も死ぬつもりだった。」

「そう・・」

スジョンは、ジェミンの強い愛を感じていた。

「不思議なものだな。こんなにおまえを好きになれたのは、イヌクのおかげ

かも知れないと思う事さえある。あのときはただ憎くてたまらなかった
が。」

「ごめんなさい」

「いまこうして、おまえが俺の中にいるから・・・俺はそれだけで幸せだ。」

ジェミンはスジョンの頬にキスをした。

「覚えているか?俺が初めておまえの作った料理を食べたときのことを」

「ええ・・・確かあなたが酔いつぶれてイヌクさんの部屋に泊まった時ね。」

「ああ、朝飯を食べに行こうと誘ったら、今食べているというから・・」

「そうそう・・俺の分もあるか?なんて言ったのよ。あのときご飯も少

ししかなくて・・それでも良いと言って、あなたはおいしそうに食べて

いたわ」

「うまかったな・・・本当に。俺は母さんの料理を食べたことがないだろ。

それなのにおまえの作った料理が、何故か懐かしかったな。」

「その後携帯を買いに行ったわ」

ジェミンも懐かしそうに笑って答えた。

「ああ・・カップルで申し込んだな。何とかおまえと連絡できるように考え

ていたんだ。今思えば、あのころ俺は幼くておまえをずいぶん苦しめた」

ジェミンはこの3年の間に大きく変わっていった。もう我が儘な世間知らず

の財閥の息子という片鱗さえないほど、心の大きな男へと変わっていた。

仕事でも信頼され、愛するスジョンと穏やかに暮らすことで大きな自信を持

つようになっていたのだった。

「でも今は幸せだわ・・。あなたがいつも愛してくれるから」

「いいか・・もう何も心配するな」

ジェミンは命を懸けて手に入れた愛を、必死で守ろうとしていた。

しかし心の奥底ではジェミン自身、同じように夢でうなされることもある。

イヌクがスジョンをいつか連れ戻しに来るのではないかと、ふと不安がよぎ

ることもあったのだ。

それを決してスジョンに悟られまいと思うのだった。

そして二人は静かに眠りについた。

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