薄田泣菫「茶話」T4.2.27
フランク・ハリスと云へば聞えた英国の文芸家だが、(ハリスを英人だと言へば或《あるひ》は憤《おこ》り出すかも知れない、生れは愛蘭《アイルランド》で今は亜米利加《アメリカ》にゐるが、自分では巴里人《パリジヤン》の積りでゐるらしいから)今度の戦争について、持前の皮肉な調,で、「独逸《ドイツ》は屹度《きつと》最後の独逸人となるまで戦ふだらう、露西亜《ロシア》人もまた最後の露西亜人となるまで戦ふだらうが、唯|英吉利《イギリス》人はーさうさ、英吉利人は最後の仏蘭西《プランス》人がといふところまでは行《や》るに相違ない」と言つてゐる。流石《さすが》にハリスで、よく英吉利人を視《み》てゐる。