気持ちはちゃんと伝えたはずなのに、
ことごとく無視をされている。
はやく返事をもらわないと、
俺はもう遠い場所へ行かなければならないっていうのに。
「じゃあ、行くから。」
彼の背中に言ってみた。
本当はまだ行くつもりなんてないけど、
一か八かの賭けだった。
俺は君のことが好きだよと、
心の中でうったえかけている。
なるべく時間をかけて、部屋から出て行こうとしてみる。
やがて俺の思惑どおりに、
泣きそうな顔をした彼が、ちゃんと俺の前にきてくれた。
「・・・なに?」
頬がゆるみそうになるのをかろうじて押さえる。
彼は俺の手をとってなぜか、
自分の服の中にひきいれ、
ものすごくかわいらしい顔で俺を見ていた。
指先にすべすべの彼の肌の感触がする。
とまどっていると次にはもっと甘えられて、
キスをしてもいいとでもいうように、
その唇がさしだされた。
「なんだよ・・・。」
ひきよせられるようについ口付けてしまう、
急に我にかえって怒られたりしないだろうか。
「俺は・・・からかわれてるのか・・・?」
夢じゃないよな、なんて思いつつ、
くっついたままでいてくれる彼を抱きしめた。
もちろん離すつもりなんてない。
一緒に連れて行こう、
他には誰も知る人のいない、遠い町へ。