129859 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

私の好きな詩

私の好きな詩

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X
2006.02.28
XML
テーマ:短編を作る(405)
カテゴリ:物語る


はやく拾わなきゃ。
早く、早く。
明るくて広いその場所には、
点々と、あたしが欲しいものがたくさん落ちている。
いろとりどりに、楽しそうなものやかわいいもの、
ただ、白いゆかに、あっちにもこっちにも。
あたしは年甲斐もなく、派手な柄のパジャマを着て、
髪に王冠の飾りをつけながら、
両手いっぱいに、ほしいおもちゃを抱え込んでいた。
駄目だ、もう持てないや。
あとひとつと思って拾うと、
腕からあふれてひとつ落とした。
今度は違うのを拾うと、またひとつ落としてしまう。
まだまだたくさんあるのに、
見渡すかぎり、先のほうはかすんで見えないくらいなのに、
あたしはもうそれ以上は手に入らないのだと思うと、
欲張って手にした品物を抱きしめて泣いた。
「どうしたの?」
いつのまにかそばにいた彼に事情を説明する。
彼は要領を得ないあたしの言葉を、
最後まで根気強く聞いてくれた。
そして、ニコニコ笑った顔のままで、
ちゅっ、とあたしの頬にキスをした。
視界の端っこのほうで、
遠くにかすんでいたものの一部が消えてなくなった。
どういうことだろうと考えていると、
今度は反対の頬に、おでこに、そして鼻先に、
彼があたしにキスをするたびに、
床に点在しているおもちゃがどんどん消えていく。
「本当に欲しいものはどれ?」
両手に抱えていた、たくさんの物でさえも、
今は数えられるほどしか残っていなかった。
「・・・これ。」
あたしはその中から一番大きいくまのぬいぐるみを選ぶと、
抱きしめてそういった。
すると、他のものがまた消えてしまった。
「そう。」
余計なものがなくなってしまったからなのか、
彼はぬいぐるみごとあたしを抱きしめて、
それからゆっくりと唇を重ねる。
なにをそんなに欲しがっていたんだろう。
あたしの胸にあるぬいぐるみも、
本当はいらないのかもしれない。

 







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.02.28 07:27:17
コメント(6) | コメントを書く
[物語る] カテゴリの最新記事


PR

Comments

http://buycialisky.com/@ Re:『凍える』僕(02/13) compare prices of cialismens health cia…
http://cialisbuys.com/@ Re:『凍える』僕(02/13) cialis rezeptfreihearing loss from usin…
あお11ろ@ Re:なっちゃん 私情は少しはさみますけどね いえ、だいぶ…
あお11ろ@ Re:なっちゃん あきらめるという意味じゃなくてそういう…
あお11ろ@ Re:なっちゃん ありがと(^O^) あたしも、大好きやで!
あお11ろ@ Re:なっちゃん 自分に感謝してる 6年前君をみつけた
あお11ろ@ Re:なっちゃん 賛成 お互いあゆみよりだと思います
あお11ろ@ Re:なっちゃん あたしも小っさいとき喘息だったんだよ 一…
なつりこ@ Re:『疑問符』7(04/11) あたたかい どんな魂も受け入れてくれるの…
なつりこ@ Re:『忘れる』(04/10) 待たない、期待しなければ、全部がサプラ…

Favorite Blog

ママの服~ママに優… おくたん♪さん

Recent Posts

Profile

あお11ろ

あお11ろ

Category

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

© Rakuten Group, Inc.
X