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ねけがら

2007/03/22
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カテゴリ:詩・小説
「あたしを返してよ」

真っ黒なその目から、彼女は涙を零す。
叫びもしない、ただ透明な液体を出し続ける。
その声は迷いもせずに僕を責め続ける。
キラキラと涙が光っていて、綺麗。

「あたしを返してよ」

僕は何もしていないよ。
何も貰ってなんていないよ。
彼女は何もくれない。
今流している、涙の一粒さえも。

少し息を吐いた。
加えている煙草の煙を少し吸った。
いつから目の前の彼女を見つめていたのだろう。
煙草の長さが半分になっていた。

(でもさ、)

目を細めて酷く虚ろな黒い目の中を探る。
少し俯いている瞳を縁取る長い睫毛。
涙に濡れて潤っている。

(やっぱり、君は返さないよ)


「あたしを返してよ」





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Last updated  2007/03/22 10:44:29 PM
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