セミリアイア「晩年」日記

2023/04/28(金)04:35

「大炎上」・質問の列。

仕事(204)

​​『グローバリゼーションの光と影』。小熊英二が、2002年、毎日新聞夕刊に書いた記事である。 毎年、3年現代文の最初の教材として取り上げている文章だ。2002年のこの時点は、世の中はグローバリゼーション礼賛の風潮だった。リーマンショックも、東日本大震災も起こっていないし、もちろん反グローバリストでナショナリストのトランプも登場していない。 書いた時点を考えれば、卓見というほかない。今でも、小熊の言う「グローバリゼーションとナショナリズムの共犯関係という視点は、新しいし、理解できる人は少ないだろう。 4月の授業で、これを特進は6時間、他コースは9時間くらいかけて読んだ。わずか5ページほどの短いものである。 そして、最後の提出課題を「筆者の言う『グローバリゼーションとナショナリズムの共犯関係』とはどういうことか、400字程度で説明せよ」とした。 ただ、連休前最後の授業1時間かけて、書き、提出できる者はその場で、できない者は連休後の最初の授業で提出することにしている。といっても、例年、書けないから、今年は「結論ー本論1ー本論2ー結論(再)」という双括型の書き方を指示し、まず、結論文が正しいかどうか、それをチェックして、次に進む、というやり方を取った。 これが、「大炎上」の原因である。質問の列ができ、書けている生徒にOKを出し、駄目な生徒には、もう一度概略を教える。それを2クラス合わせて40数人。昼休みにも、質問の列。おかげで、2,3,4,5の4連チャンが、実質5連チャンに。目が回りそうだ。 こんなに忙しかったのは、久しぶりである。専任の時は、放課後に質問の列ができることは珍しくなかったが、非常勤では、ほぼ初めて。 まあ、困難な課題を、質問して理解し、何とかして連休前に片付けたいと思う生徒と、連休前は昨日を含めて、後は来週火曜日にしか出勤しない非常勤講師とのアンバランスが生んだ珍現象かもしれない。半径5kmの日常とネットの世界だけで生きる生徒たちには、そのように世界を捉えることは初めての経験で、新たな語彙を獲得し、それをすぐに駆使するという、アタマの疲れる作業ではある。しかし、「難しい」と言いながら、考えに考えて、質問に来る。「ああ、結論文はこれでいいね」というと喜んで帰り本論部分に取り組む。また持って来て、「これは、民衆のナショナリズム。それだと『対立』。『共犯』と言えるのは為政者のレベルでのナショナリズムでしょ?」と訂正すると、すぐには納得せず「だって……」と言う。「だからさ……」となお説明すると、「あ、そうか」と言って、本論を書き直す。教える、教えられる手応えがじかに感じられる。 正直なところを言えば、だから仕事(授業)はやめられないのである。 現在のこの時点でも、「グローバリゼーションとナショナリズムの共犯関係」とはどういうことか、小熊の文章を読まずに、即座に答えられる大人は少ない。ナショナリストは同時に反グローバリストであるのが、通例だからだ。トランプを見れば、すぐ分かる。しかし、彼のナショナリズムは、よく言えば「愚直」、言葉を選ばず言えば「バカ」なナショナリズムだ。そして、ナショナリズムをそういうふうにしか理解できない多くの日本人も、アタマが粗雑である。 しかし、両者はまさに「共犯関係」であると自分も考えている。「共犯」するナショナリズムは「狡猾」である。その根拠は、次回、連休後、解答を提示することで示したい。

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