セミリアイア「晩年」日記

2024/06/07(金)07:13

エリーゼ音楽祭 予選 拾遺(2)Sさんに哀悼を込めて

試合日誌(143)

​​去年、初めてエリーゼ予選に出たのだが、その時にこんなことを書いていた。→ 読み飛ばし。 その中で、Sさんについてこう書いている。 ​懇親会は楽しかった。聴衆投票で1位だった72歳の男性は、娘さんの言語コミュニケーション障害の音楽療法がきっかけで、四十代でピアノを開始。娘さんはピアノパラリンピックにまで出たそうだ。『ひまわり』を見事に弾いていた。すごくいいアレンジで、「誰のアレンジですか?」と聞くと「中村八大」です、と。今度、自分も楽譜を手に入れたい。 送られてきたプログラムの中に、Sさんの名前がなかったので、何かの事情で、もう出ないのかな、などと妻と話していた。 今回、新たに審査員に加わった音楽院のM先生(この人は自分に満票(すべての項目が○)の評価をくれた)が、ゲストとして1曲弾いたのだが、弾く前に「これは、昨年亡くなったSさんに、私が初めてレッスンを依頼された曲で・・・」と話す。「Sさんは去年、ここで『ひまわり』を弾かれて・・・」。驚いた。 後で聞くと、昨年末、帰宅途中の交通事故で不慮の死を、ということだったらしい。長年、娘さんとともに音楽院に通っていたそうで、同じ音楽院のT先生は「Sさんは、自分はピアノはやめられないんだ、娘との唯一のコミュニケーション手段だから・・・とポツンとおっしゃってました」と言った。 自分は、今年はSさんと同じジャズ・ポピュラー部門1位で、すっかりいい気になっていたのだが、何か粛然とした心持ちになった。 去年の記事を読めば分かるが、懇親会の会場に行くのに、先導の社長が道を間違え、しかも早足なものだから、高齢のSさんは次第に置いていかれ、自分とT先生が一緒に店を探しながら歩いた。娘さんの話は、その折に聞いたと思う。自分の拙い『トロイメライ』(その時はT先生が満票の評価をしてくれた)に、Sさんからも「丁寧で、すごくよかったですよ」と言っていただいた。 Sさんとの交流は、初対面のその時だけである。今回の懇親会の席で、チョッピンから聞けば、Sさんは大きな建設会社の社長だったそうで、今は勇退され、ピアノを趣味として、世間から見れば悠々自適の老後を過ごされていたそうだ。 Sさん、ありがとうございました。『人生のメリーゴーランド』聴いていただきたかったです。今度、Sさんの弾かれた『ひまわり』の楽譜を手に入れて、自分も弾いてみたいと思います。​

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る