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知人から、「体にいい水があります。一度、説明会に行きませんか」という電話がかかってきた。きつい腰痛も、この水を飲んで治った人がいるという。まあ、この時点で怪しいなと感じた。 最近は、深層水とか、どこどこの名水とか特徴を付けて、普通のミネラルウォーターの数倍の値段のする水を売っている。しかし、その値段に見合った価値があるかどうか分からない。ただ、東北大震災のあとは、放射能汚染された水だけは飲みたくないという思いがあって、以前よりコンビニやスーパーでミネラルウォーターを買う量は増えた。体に悪くない程度ならいいという感覚で、水を飲んで病気が治ることまで期待はしていない。 だが、せっかくの知人の勧めである。おそらく説明会に人を集めろと言われて困って連絡してきたのだろう。知人の顔を立てるためもあって、行きますよと答えた。 水の商品名を聞くと、「自然回帰水」というので、ネットで念のため調べたら、ネットワーク商法の噂のある会社だった。自然回帰水というペットボトルの水よりも、三十万以上する浄水器の販売がメインのようだった。 いずれにしても、そんな金はないし、どんなに勧められても断る自信はある。まずは知人の顔を立ててあげようと思った。 当日、待ち合わせ場所に行ったら、知人はもう一人、二十代の女性を連れてきていた。三人で会場に行って受付を済ませると、スタッフから自然回帰水の500mLペットボトルを勧められた。ただし、自販機で私には、特別効果が高い「自然回帰水ゴールド21」が当たったと言われて渡された。普通の回帰水のペットボトルが一本180円なのに対して、このゴールド21は、10倍の1800円もするという。「滅多に当たらないのですよ。すごくラッキーですよ」とスタッフが言った。演出くさいなと感じた。会場に、売れなくなった芸能人、歌手たち数人の名札が書かれた花が飾ってあったのも、演出くささをより一層強めた。 その自然回帰水のコールド21を一口飲んでみたが、ぬるいせいもあって、普通の市販のペットボトルと味の差はまったく感じない。「この水を飲むと、おしっこが近くなるので、行きたくなったらいつでもトイレに行ってください。体にいい証拠ですから」 そう言われたが、私はいま、頻尿に悩んでいるくらいだ。夜中に一時間置きくらいにトイレに行きたくなって目が覚める。それで頻尿を抑える薬を病院で処方してもらって飲んでいる。これ以上、おしっこが近くなっては困る。 ただ、水分を大量に、体が欲している以上に飲めば、尿として出て行こうとするのは、正常なことだ。だが、500mL一本飲んでも、まったく尿意は催してこなかった。スタッフが、飲み干したペットボトルに、浄水器から水を注いで追加してくれた。 「これは効きますよ」 そうは言われても、体は正直だ。どんな名水だろうと、少し飲んだくらいで足の痛みがなくなるわけがない。もし、本当に痛みが消えたら、麻薬のような薬でも入れないと無理だろう。水のようなものは、長期間飲用して、初めて効果があったかどうかわかるはずだ。それを「すぐに変化が現れますよ」と言われると、かえって不信感が起こる。やり方が下手だなと感じた。 「時間が来ましたので、説明会を始めます。会場に入ってください」と言われたので、会場に入って着席した。(続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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