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アロマ姉さん繁盛記from南房総

アロマ姉さん繁盛記from南房総

クレームの葉書

「支配人 様
私は東京でアロマセラピストとして働いています。今回”アロマ時間”の記事を見てとても興味を持ち、楽しみに伺いました。アロマ姉さんというよりおばさん? 温度の感じられない対応、なによりがっかりしたのがつぼさえはずれた心が伝わらないマッサージ・・・・ これが自慢と感じているホテルにも理解出来ません。普通だというのならいいのですが、雑誌に掲載するならそれなりの内容を期待しています。お金と時間をかけて、勉強させて頂きました。」

四つ切りサイズの画用紙に、タイプ打ちされた無記名の葉書。差出人も、筆跡もわからないように作られたこの葉書の消印を頼りに、お客さまを探しだし、だれが担当し、どのように行われたのかをくわしく報告するように。と支配人からの支持を受けたのは四日前の事です。

この葉書を目にした時、二つのことが同時に頭に浮かびました。「ここに書かれていること、わかるなあ・・・全てそのとうりだよ。」そして同時に差出人の悔しさと寂しさ。

アロマルームへ戻り、コンサルテーションシートを頼りに名前のない差出人を探してみました。みつかりません・・・本気で探す気もないのだから、見つかるはずも有りません。今しなければならないことは、「だれが」という事よりも、この事実から目をそらさない事だと思うのです。しっかりと受け止める事だと。

アロマルームのスタッフに、一人ずつこの葉書を見せました。皆、息を一瞬飲み込み、この「おばさん」とは自分の事なのかと頭をよぎったようです。「この葉書を見て、何を感じた?素直な気持ちを聞かせて。」こう問いかけて見ました。

A 「私、下手だもの。つぼがはずれてるっていうのもわかるなあ。もっと練習しなくっちゃ。」  

姉さん 「でも、これはあなたの事では無いかもしれないよ。だれが担当したかは問題じゃない。だれ がやっていても同じだと思うから。これがわがアロマルームの現実だから。」

A 「でも、この人変だと思います。本当にアロマセラピストですか?そうだとしたらこの人だって、何人ものお客さまの背中をとうして育っていったはず。私のような下手な時代があったはず。ああ、この人はまだまだだなあ・・って思えるんじゃないんですか、本物のアロマセラピストだったら。気にすること無いと思います、こんな変な手紙。今のアロマルームのあり方を変える事無いと思います。嫌がらせかもしれません。気にする事なんかないですよ。私は全然気にしません。こんな手紙。」

この夜、彼女は家で食べたお弁当にあたり、翌日昼過ぎまで寝込み、夕方からの仕事に無理を押してでてきた事を知った。「もっと現実を見なくちゃ駄目だよ。この手紙を悔しいと思うくらいじゃ無ければ・・・」こうメールしようと思いながら、しなくて良かったと思った。”気にしていない”と相手を批判する事で、崩れそうな自分の心を支えていたのだと感じた。

翌日、Bにこの葉書を見せた。
B 「私、またバッチフラワー飲んで見ようかな・・」「なんで?」

B 「自分に自信が全くもてないんだ。看護婦をしていてもそう。アロマのマッサージなんか、短いコースならまだしも、長いコースになるとこんな私がこの人にマッサージして本当にいいのだろうかって、どんどん申し訳なくなってきて、どんどん自信が無くなって・・・」

姉さん「あなたのマッサージは丁寧で、お客さまもずいぶんよろこんでくれるじゃない。」 

B 「それでも、自信がもてない。なにをやっても自信がない。でも、今のままじゃいけない・・・・・」

現役看護師で、Bほどアロマトリートメントの数をこなしているひとは、日本にはいないだろうとさえ姉さんは思っている。あなたが看護師さんたちにアロマの神髄を教える日がきっと来るよ。あなたはその素手で人の体調を感じ取れる感覚を研ぎ澄ましているのだから。
そんな彼女でさえ、自信が無いといってこの葉書の前にうなだれる。

翌日はCに見せてみた。
「あ、この葉書ね。この葉書をわざわざ出す人は、やっぱ、なにか心にある人だと思いますよ。ちょっと特殊な葉書だと。でも、そう思うだけじゃいけない。こんな事いわれないように改善して行かないと。そんな事考えました。」

なかなか自分の心を私に開かないCが、正直な自分の二つの思いをそのまま聞かせてくれた事が、この時は何より嬉しかった。

最後の日はDに見せた。
D 「これってアロマ姉さんの事ですよね」 

姉さん「ん、そうかもしれないし、違うかもしれない。お客さまにとってはここにいる人は皆アロマ姉さんだから。」

D「え、そうなんだ。じゃあ、このつぼっていうのは、もっと強く押したり揉んだりする手技をこれからいれていくって事ですか?強く揉まないからつぼに入ってないっていうんでしょう?」

姉さん「そうじゃない、マッサージによって目的、手技は皆違う。それが熟練された十分な物であれば強くなくても、押さなくともお客さまは満足してくれる。」

D 「じゃあ、このつぼがはずれたってどういうこと?」

姉さん「みんなが下手だっていうこと。下手な事にさえ気づけていないっていう事」

D 「ええ~、私は一人でお客さまを迎えて送り出して、それなりにお客さまも満足して下さる。自分が未熟だとは思っていない。」

姉さん「私は、皆が未熟なのも下手なのも、わかっていたよ。でも、この”心の伝わらない態度”という表現に疑問を持っていた。アロマセラピストの人に本当に良くしてもらったとのアンケートの回答が多いから、本当に態度が悪かったのか、疑問に思ってた。でも今日、あなたと一緒に久しぶりに仕事してよくわかった。
マッサージは下手でも仕方ない。それが現実だから。でも、”自分が大切にされた。”そうお客さまに感じさせる事が出来たならあなたのマッサージの評価はぐ~んとあがる。ともかくお客さまを大切に すること。そう何回もいってきたよね。     

それはお客さまにおべっかを使うことや、調子の良いことを言う事ではない。あなたの足音、タオルのかけ方、ゴミの捨て方、テイッシュの引き方、マッサージ中のあなたのそれらの動作、気づかいにお客さまは、大切にされた、心地よかったと感じるのだから。        

多くを語る必要は無い。お客さまにたくさん語っていただき、どれだけお客さまに、”聞いてもらえた”と感じさせる事が出来るのか、どれだけお客さまの話しに興味を持つ事が出来るのか、それらがマッサージ技術よりも、精油の知識よりも、ずっと大きい。」

D 「わたしは、今、自分を未熟だとは思えない。でも、後になって今の自分を思い出したとき、ああ、未熟だったな恥ずかしいなって思うひが来るのかもしれない。    
出来ることなら、その時、今より成長した自分でいたい。」

東京で働くアロマセラピストさん。素敵な葉書をありがとう。あなたの葉書から我がアロマルームはたくさん勉強させて頂きました。結局この葉書を頂いた一番の原因は姉さんにあると思っています。そのためにスタッフの皆の心を傷つけてしまったと。

”この葉書は我がアロマルームの宝としていつまでも飾っておこう!”そう話しています。一年後、二年後の成長のために。

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2002年も、もうすぐ終わります。 結局、「アロマ姉さん繁盛記」は今年、何回発行できたのでしょうか?お詫びです。反省です。皆さんに話したいことは、毎日現場で起こっています。個性豊かなスタッフもそろいました。毎日、笑ったり、泣いたり、怒ったり・・・

来年からは、我がアロマルームのお世話になっている”館山のホテル・オーパヴラージュ” ”白浜の紋屋旅館” ”鴨川の酵素風呂ナチュラリラクゼーションハウス”この三店の話を交えながら、定期的に発行させていただきます。個性豊かなスタッフも、いろいろなことを語ってくれるはずです。2003年も成長を見守って下さいね。

PS・そうそう、「アロマおばさん繁盛記」にした方が良いでしょうか?姉さんは、本当におばさんです。今は、髪を短くきりすぎると”おじさん”になってしまうので、要注意しているところですが・・・お姉さんになろうとは思っていません。 なぜ”ねえさん”という言葉を愛しているのかというと、関西人は年上の人を「姉さん」「兄さん」と呼びますよね。あれ、いいな~といつも思うのです。たとえばちと頼りない人であっても、まったく=!と思うひとであっても、赤の他人を 「ねえさん」と愛情を込めて呼ぶのです。血のつながりなんて、関係ないのです。だって皆つながっているのだから。いつも身近にいる上司の悪口を誰かが言ったとき「すいませんね~、あんなんで。」無意識に謝っている時が有ります。喧嘩をして、ののしりあって、許しあって、そう、 いつの間にか、皆、ねえさんでありにいさんであり、妹弟になっているのです。みなさんのまぬけなねえさんでありたい。ん~、やっぱ、来年も「アロマ姉さん」でいきます。ヨロシク!


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