カテゴリ:Night
期末試験の終わってから冬休みまでの学校は、プロ野球でいえば消化試合みたいなものだ。やることはないのだが、授業日数を稼がなければならないので休みにするわけにも行かない。
だから、この時期はいかにも埋め草的な行事が集中している。 ひなたぼっこをすれば汗ばむようなその日の午後、その行事の準備は始まった。 まず食堂のテーブルを全部隅に片づける。 そしてぽっかり開いた中央のスペースにいつもなら食器や調味料を置くテーブルを設置し、その上に大型のコンロを据えた。 後はパイプ椅子を適当に散らして、準備完了。 僕らの仕事はここで終わる。 後は、いつも給食を作ってくださる調理の方々の仕事となる。 手伝いましょうかと声をかけようとしたが、衛生上の関係で調理担当者以外は給食の調理スペースには立ち入ることが禁じられていることを思い出し、職員室に戻った。 やがて日が沈み、生徒がパラパラとやって来る。 SHRを終えた生徒たちがあたたかい匂いに満ちた食堂に集まってきて、予め食堂のコンロの火にかけられていた大きな鍋が中央のテーブルに運ばれてくると、それは始まった。 我が校名物の定時制鍋。 鍋を中心に車座に席を取った生徒たちが鍋のそばに集まってくる。 調理の方たちが鍋の中身をよそった椀を一人一人に渡し、受け取った生徒は同じテーブルに置かれたおにぎりを取って席に戻り、談笑しながら食べる。 鍋の回りに小さな輪がいくつもできる。 小さな輪は、いつも一緒に給食を食べているグループであり、テーブルが無いというだけでいつもと変わらない風景なのだけど、みんなが同じ鍋から食べているという気持ちがあるからだろうか。いつもの給食よりも和気あいあいとした空気が流れているような気がする。 きっと高いところから眺めたら、小さな輪を一本の線で繋げば、大きな輪が食堂にできているのを見ることができるに違いない。 僕が2杯目のおかわりを貰いにいった時、「大変ですね。替わりましょうか」と声をかけると、調理の人はニカッと笑い「大丈夫」と答える。 「昔なら、1度に4つも鍋を並べてもすぐ無くなったんだけどね」 今年はコンロは1つ。その上には2つめの鍋が置かれている。 「最近の子は、小食だから」 そう言った顔は、少しさびしそうだった。 1時間ほどで鍋は終わり、生徒たちは教室に戻った。 3つ用意した鍋のうち、3つめは結局調理室のコンロの上でコトコト煮られたまま終わった。 明日は大掃除。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004.12.31 01:49:29
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