カテゴリ:Midnight
授業で使うためのネタはいろいろ頭の中に入っているのだが、中には、僕には面白いんだけどこれは使えないな、というものもある。
ドイツ文学者の小塩節氏のエッセイで紹介されていた、「皇太子殿下の口頭試問ゲーム」もその一つ。 二人で行うこのゲームは、皇太子が大学に入学するための口頭試問を受けるという設定である。 まず、試験官役が問題を出題する。相手は皇太子なのだから、絶対に落とすわけにはいけないので、どんなに頭の悪い人でも解けるような問題を出すのだ。 試験官「皇太子殿下、三十年戦争が行われたのは何年ですか?」 それに皇太子役が答えるのだが、この皇太子は甘やかされて育ったせいで、非常に頭が悪い。そのため、誰も分かるような問題でも、間違えてしまう。 皇太子「13年」 それを聞いた試験官役は、皇太子が合格するよう、皇太子の答えが正解となる理屈をひねり出さなければいけない。 試験官「正解です、殿下。三十年戦争と言っても、夜は戦闘が行われなかったので、 戦争が行われていたのは、実質十五年と計算できます。 更に、休戦期間等もありましたから、そうした時間を引きますと、 戦争が行われていたのは実質十三年と言えるわけです。 殿下、お見事、合格です」 つまり、理屈という膏薬をいかにしてうまく貼るかという、ちょっとした頭の体操である。 個人的にはこういう理屈をこねる遊びは大好きなのだが、授業でこのゲームの話をしても、今の高校生にはこの面白さは伝わらないだろう。 理屈をこねるということも、頭だけで考えるということも、今の高校生はあまりやらない。彼らにとって、こうした屁理屈は条件反射的に生み出すものであり、視覚を伴わない遊びには、あまり興味を示さない。 中にはひょっとしたら面白そうだと思ってくれる生徒もいるかもしれないが、そんな生徒だけのために他の生徒が退屈するような話をするのは、適当ではないだろう。 でも、世界史の授業で三十年戦争を扱うたびに、この話が頭に浮かび、しゃべりたい衝動が口元に起こるのである。 「そう言えば、ウィーンの大学生がカフェでよくやる遊びに『皇太子殿下の口頭試問ゲーム』というのがあるんだけど……」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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