Wandering cloud
「あー…」
「雲になりたいな、雲。流されて漂ってそんで消えるの。いいなぁ…」
「雨になって地面に叩きつけられても?」
「………そういうところ嫌い。」
「ははっ」
「いいなぁ。雲いいなぁ。どっか遠くに行きたいな。」
「ファラウェイシンドローム」
「?」
「特定のどこかじゃなくて、どっか遠くなんだろ?」
「うん。知らないとこ。」
「でも行かないじゃないか。」
「行けないんだよ。仕事あるし。お金大事だし。」
「辞めたいんじゃないのか?」
「辞めたい、わけじゃない。ただこのままじゃ駄目だってこともわかってるし、だから辞めたい。けど………。」
「それがファラウェイシンドロームの原因か。」
「別に…、そういうわけじゃないけど…。」
「…………本末転倒なのはわかってるんだ。」
「なんにもすすんでなくて、置いてきぼりで。」
「焦ってないわけじゃないよ。」
「でも焦っても何も変わらないし。」
「抗う力も残らないほど、疲弊して、飲み下すだけの毎日だ。」
「流されて流されて、どこにもしがみつけないままだ。」
「ならもう雲じゃないか。」
「消えてなくなれない。」
「………。」
「………ごめん。」
「ごめん」