役になりきる事と、自分を見失う事とは違う
先日、質問を受けました。なりきる事って、どうしたら良いのですか?自分以外の他の人になるって、出来ないんじゃないんですか?そうです。自分以外の他の人にはなれません。ただ、なりきりワークで扱うなりきりは、自分というしっかりとした土台の上に他の人、つまり役を乗せるイメージなんです。芝居の稽古をしている時、役者はその役になりきろうとは考えません。その役を演じているのは自分。どんなに頑張っても、その役にはなれない。だから、同じ役を違う俳優が演じると、違う役になる。同じロミオでも、俳優が違えば違うロミオになる。それが面白い。時々、稽古中に頑張りすぎて、一生懸命にその役に没頭する。脚本分析でその役のキャラクター、心理、感情を考える。そして、その通りにやろうとする。そこで、ダメが出る。役者はもうどうしたら良いのか分からなくなる。そこに自分が居なくなる。どんどん芝居が出来なくなる。ドツボにハマる。悩んで、悩んで、悩み切ったら、役になろうとするのではなく、自分という人間を、脚本上の状況、人間関係の中に置いてみる。そこで生まれる感情、生理、肉体の状態をしっかり味わう。その上で、言葉を出してみる。それが感情、肉体、言語と一本を通した表現であれば、その方がリアルなんなど思う。芝居でドツボにハマったら、一度試してみてほしい。自分の感情、肉体、言語を通した表現から、もう一度再出発、そこに役を乗せていったら良い。演技の仕方なんて、一通りではない。色々な方法を試してみて、遠回りしても良い。むしろ、遠回りした方が演技に厚みが出るかもしれない。にほんブログ村