|
カテゴリ:美術 絵画 教室
小倉さんの新作は今までの作品とは少し違った傾向が見られます。 この作品は筆のタッチ、色使いなど印象派的な表現は小倉さん独特のスタイルが感じられる今まで同様の味があります。しかし印象派が捉えようとした自然の中の精神性といった具体的な表現から全く抽象的で目に見えないイメージをベースにした表現に実験的に制作しようという試みを強く感じられます。 抽象表現というのはいくつかの違ったアプローチの仕方がありますが、具体的なイメージを大きく変化させる、或いは目に見えないものを色と形に置き換えて見せる、または作家自身の行為を見せるということが抽象的イメージにつながってきます。 小倉さんがこの作品を描こうと思ったきっかけは、彼女自身が幼少時に体験した臨死体験と言っていました。川で泳いでいたとき、少し波にのまれて水の中でどこに自分がいるのかわからなくなり、その時、太陽の光を水面の上に感じ、その光に向かって必死で泳いだという記憶が強く残っていたそうです。今でもその記憶が鮮明に残っていて、その時に感じた印象を表現したいと言っていました。川の中の自分を表現するというより、自分自身が生死の境を(短い時間だと思いますが)ふわふわと彷徨っていた感覚を絵画としてどのように見せられるか、という試みを今回の制作のベースにしたいと言っていました。 臨死体験といった目には見えない自分の命がどこに行くのかわからない感覚を表現するというのはまさに抽象表現です。 この作品の中で彼女自身の命というのは曲がりくねっている曲線なんでしょう。そして彷徨っている曲線は画面上の黄色い色(光)を追い求めている雰囲気を表現しようとしているのでしょうか?人の姿とか顔とか腕といった具体的な姿を見せるのではなく、ただ細く曲がりくねって彷徨っている曲線を自分自身として表現しているのはまさしく抽象表現です。この作品を見て、芥川龍之介の「クモの糸」を思い浮かべました。何かに置き換えてもっとわかりやすく作家の思いを表現するというのは文学、音楽、美術といった芸術には必要で大切なことかもしれません。そして鑑賞者にも大きく広がって見えてくる創造性かもしれません。 よく頑張りました、小倉さん! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/10/17 11:45:46 AM
コメント(0) | コメントを書く
[美術 絵画 教室] カテゴリの最新記事
|