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ラブソング


「ラブソング」


<ラブソングの、A面>

おしゃれとは言えない焼き鳥屋で夜ご飯を食べてから、
僕と彼女は、駅前のベンチに座って話をしていた。

彼女は明るい口調で、男運が無いとか恋愛は上手くいかないという話をしていた。
僕は、きっと良い恋愛が出来るようになるよと、励ましていた。

明るい調子で話していた彼女が、突然とても寂しそうな顔になり、つぶやいた。
「いつも、長続きしなくて・・」
彼女が抱えている苦しみがなんなのか、僕にはわからなかったけれど、
その一言で、彼女が孤独を恐れているということは十分に伝わってきた。

僕は、彼女の抱える闇がたとえどんなに大きなものだとしても、
彼女を受け入れようと決意していた。
「大丈夫だよ。僕はいつでもそばに居るから。」
僕がそう言った瞬間、彼女は、両手で覆うように顔を隠し、うつむいた。
「どうしたの?」
「・・なんでもない・・」
震える声で彼女は言った。
彼女は、泣いていた。
強がりな彼女は、絶対に泣き顔を見られなくなかっただろう。
けれど僕には一瞬だけ見えてしまった、今にも泣き出してしまいそうに歪んだ彼女の顔が。

僕は、彼女の肩を抱き寄せた。
小刻みに震える彼女の肩が愛しくて、僕は、絶対に彼女を守ろうと誓った。




<ラブソングの、B面>

いやー。参ったわ。
やばいなあとは思ってたんだよねー。
そいつ、ずっと臭いセリフばっかり言っててさ。
私、必死に笑いこらえてたのよ。
いや、ほんと、自分の顔のこと考えて発言して欲しいんだけどって感じ。

で、
私が男運悪くて長続きしないみたいな話してたんだよね。
したらそいつ、何をどう勘違いしたのか「僕は大丈夫だよ」みたいなこと言ったの。
その瞬間さ、さすがにこらえきれなくて笑っちゃったんだよねー。
違う、違う、男運が悪くて、冴えない男からしかモテないって話してんの!
テメーみたいのの話をしてるんだっての!

まあ、笑う瞬間に顔押さえて見えないようにしたからさ、
笑ってたってのはばれてないと思うんだけどね。
きっと、そいつは自分のセリフに感動して泣き出したとでも思ってたんじゃないかな。
で、肩抱いてきちゃったりしてさ。

え、それで?
その日はそれでわかれて、今でも連絡取ったり、続いてるよ。
私の誕生日までは付き合っといてさ、プレゼントだけもらっとこうと思って。
けっこうお金出しそうなんだよねー。
その後?
いやいやいや、もらう物もらったらサヨナラだよ!



A面、B面、オートリバース・・・

おわり


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