かめ@ゴミスティピョンの小説と日記

2005/03/16(水)19:14

「恋する存在」 10

連載小説(111)

<6> 「今日はアリサが海鮮料理を作ってくれたよ。懸賞で食材が当たったんだ。」  毎晩の日課である父親との対話。翔太は今日あったことを父親に伝えた。 「なんだか最近はアリサの話ばっかりするな。」 「そんなの、他に何も話すことが無いからだよ。」  からかうように言った父親の言葉に、翔太は少しむきになって言い返した。しかし、実際に翔太の生活は常にアリサと共にあるようなものだった。 「ただ、今日ちょっと気になったことがあってさ。」 「ん、なんだ。」 「アリサが、食事している時に『人間になりたい』って言ったんだよね。私も人間になりたいって。」 「・・そうか。まあ、自律思考型ロボットなら誰もが考えることだろうな。」 「どうしたらいいかな。俺、そんなアリサになんて言っていいかわからなかったんだ。」 「それは、アリサが自分で解決しなきゃいけない問題だろう。自分をロボットだと認めて、ロボットとしてどう生きるかを考える。しかし、それは私達が思っているほど難しいことでは無いよ。人間が人間として生きることを考えるのと同じように、ロボットもロボットとして生きることを自然と考えられるようになる。」 「そうなのかなあ・・。」  翔太は考えた。自分がもしもロボットだとしたらどうだろう。自分はロボットなのだから仕方ない。ロボットとしての幸せを考えようと、そう素直に前向きに生きることが出来るだろうか。しかし、天才的なロボット開発者である父親が大丈夫と言うなら大丈夫だろうか・・。 「・・それよりもちょっと気になることがあるんだが・・。」  翔太の思考を中断するように、父親がそう言った。 「気になること?何?」 「あー、翔太は他に何か気になることは無かったか?アリサの言動や行動で。」 「・・そうだなあ。・・これは俺の気のせいかもしれないんだけど・・。」 「なんだ?」  翔太はアリサの今日の行動、翔太の着替えを見て照れる様子や、翔太が美味しそうに料理を食べているのが嬉しいとか、そういうところを父親に報告した。 「アリサから、思われてるっていうか・・・。いや、それは家族として当然なのかもしれないけど、反応がなんか女の子っぽいって言うか、そういう目で俺のことを見ているような気がするんだよね・・。」 つづく

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