カテゴリ:連載小説
翔太の話を聞いて、父親は感心するように言った。 「ほう。・・そうか。」 「いや、もちろん俺の気のせいかもしれないけどね。ロボットが人に恋をするなんて。」 翔太は、自分の言ったことに恥ずかしくなってそんな言葉を付け足した。それに対して、父親はにやにやと笑みを浮かべながら言った。 「いや、間違ってないよ。お前はけっこう鋭いんだな。それくらい相手の気持ちに敏感なら、お前はきっと女の子からモテるだろう・・。」 そして翔太の父親は、一つ咳払いをしてから真剣な表情に戻って話を続けた。 「まあ、それは置いておいておくとして・・。実はそれが今、私達も懸念していることなんだ。」 「どういうこと?」 「実は最近の研究で、『恋するロボット症候群』という事例が紹介されている・・。」 翔太の父親が説明するところによると、自律思考型のロボットは主人に好意を持つようにプログラムされているらしい。それはロボットの精神衛生上、嫌いな相手に仕えることは苦痛となり良くないためである。 しかし、時にその好意が、原因はいろいろな説があるらしいが、何らかの理由で過剰になってしまうことがあるらしい。 それを、「恋するロボット症候群」と名づけているそうだ。 「じゃあ、アリサは本当に俺に恋をしているの?」 「ああ、そうだ。アリサから送られてきたデータに最近その兆候が見えていたので、気にしていたんだ。」 「・・・じゃあ、どうするの?このままじゃまずいだろ。」 「まあ、この症状は改善されなくてはならないな。絶対に叶わない恋なんてしない方が良い。・・しかし、現段階では症例も少ないし、その悪影響がどういったものかということもわかっていない。私達、開発者の側としては、このまま様子を見ようかと思っているんだ。」 「このままって、アリサが俺に恋をしたままで過ごせってこと?」 「ああ、そういうことだ。まあ、別に好かれても悪い気はしないだろ。今まで通りにアリサと接してやってくれ。」 そんな無責任な。翔太は思った。正直、相手が自分に恋をしているなんてわかったら、こっちだって意識してしまう。・・・そんな、ロボットのことを意識してしまうなんて、恥ずかしくて言えないが・・。 「わかったよ。今まで通りに過ごせばいいんだね。」 「まあ、よろしく頼むよ。」 翔太には、父親がこの事態を楽しんでいるような気がしてならなかった。だとしたら、本当にいい加減にして欲しい。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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