マツリカ・マジョルカ
「マツリカ・マジョルカ」 相沢沙呼 2012年 角川書店かつては小説紹介サイトをしていたような気がしないでもない、イカ・タイム。w本屋で立ち読みして、マツリカさんのちょうドSっぷりが気持ちよかったんで、買ってみた。短編連作のミステリー小説なんだが、人は死なないし、テロリストもでてこない。扱ってるのは高校生のありふれた日々のことばっかり。そんなふとした謎を、マツリカさんなる黒髪美少女が推理するって物語。このマツリカさん、高校生のくせになぜか電気も水道もない廃屋ビルに一人で住んでて、一日中、双眼鏡で人間観察しているという、ちょっと頭のおかしい子。wでも、マツリカさんは主人公じゃないのね。主人公は冴えない男子高校生で、勉強できない、友達いない、コミュ障、ヒッキー暦あり、重度のシスコン、と、見事にそろったダメスキル保持者。マツリカさんは、そんな彼を完全なパシリでこき使いまくる。ひでぇ。(^^;主人公は、マツリカさんが興味をもった変な怪談話の捜査に協力するかわりに、黒髪美少女マツリカさんから勉強をみてもらえる、というごほうびのために、犬のように走りまわる。というか、「おまえ、犬みたいね」の一言から、ほんとうに最後までずっと犬呼ばわりされつづける!その後は、「おまえ、本当に役立たずね」「おまえ、阿呆でしょう」等々の素敵なお言葉が繰り返される。Mにはたまらない展開だッ。結局、主人公なのに、「おまえ」「犬」だけで、名前では1回も呼んでもらえない……。(T-Tそして、随所にでてくるマツリカさんの肢体のエロ描写。とくに、スカートから覗く太腿に対するコダワリは、作者さん、力いれてるなぁ、と感心させられたよ。(^^;そんなこんなで、ストーリーというよりキャラで読ませてる感じか?……と思ってたら、最終話!全4話中、3話までは上に書いたように日常の些細な事件で、それをマツリカさんの推理のみで完結してまうかたち。本当に真実なのかどうかも明かされないので、あとは脳内補完だったんだが、最後の最後で深いとこまでエグってきたねー。それまでが波風なかっただけに、受ける印象は余計鮮烈になる。確かに、読んでいてふと疑問に思う描写があったりしたよ。最後で見事に収束する伏線を、これは伏線だと気づかせないのはすごい。なるほどなー。うーん、計算されてるぞ。「クビキリサイクル」の最後の後日談を読んだときのような感じ、というのは言いすぎかもしれないけど、素直に面白いと思えた良作。肩肘張らずにさくっと読めるオススメの一冊。でゲソ。