【読書レポート】薔薇盗人 (新潮文庫) 浅田 次郎
私の中で作家ベスト2は荻原浩と浅田次郎である。ベスト3の方が収まりが良くてカッコイイと思うのだが、もう一人は今のところなかなか決めあぐねてる。船戸与一かな、と思うのだが、ちょっと毛色が違うし、当たり外れが比較的大きいので、なかなか“ベスト3!”と言えないでいる。でも、船戸先生も今年鬼籍に入られてしまって、もうこれ以上著作も増えないので、敬意を表して暫定ベスト3にしておきましょうか。荻原浩はもうこれは全くハズレがない。人間の弱さや悲哀、そして奮闘ぶりを笑い7:涙3で読ませてくれて、もう全く素晴らしい。彼については今度作品を読んだ時にまたじっくり書く。それに比すると浅田次郎は若干、ほんの若干だが当たり外れはある。浅田次郎は終戦直後とか、日本が貧しかった頃の話を書くとやたらめったらにうまい。もう、その時代に生きてたんじゃないかと思うくらい。そして、そこに生きる貧しい人たちの悲哀で泣かせる。今作は短編集で、その中で「ひなまつり」がそれに当たり、やはり今作の中ではこれが一番いい。そして、普通の作家だと吉井さんが帰ってしまったところか、病院に行って戻ってきたところで終えてしまうだろうところを、もうひとつエピソードを提示して、しっかり泣かせて終わってくれる。ちゃんと納得行くとこまで話を持って行ってから終わってくれる。ここが満足する点なのだ。大体、良く言えば余韻を残してあとを読者に委ねる、でも実際にはどうとでも取れるような終わり方をして、作者自身もどう終わるべきなのか分かってないんじゃないか?っていうような終わり方をなぜするのだろうか?誰得なのか?作者は作者でちゃんとこの後どうなるか、自分の中にあるはずなのに、なんでそれを示して終わらないのか。読者に考えさせるって、読者なんて1冊1冊の本にそんな考える時間を持つほど思い入れ無いですって。「今日はカフェに半日いて3冊読んじゃいました。」なんて本に時間を割ける余裕のある人はいいけど、私なんか読みたい本次から次から買っちゃうから常に在庫が50冊くらい溜まっちゃってるからね。それを基本寝る前の少しの時間で毎日読み進めてるからね。よっぽどの素敵な本じゃないかぎり、作者の語らなかった「その後」まで考えるヒマなんかありませんって。「ふーん、中途半端なの。」で終わっちゃいますよ。。。。って、あぁ、話が脱線してしまいました。話を戻して今作ですが、現代の話でも、やはり、浮かばれない境遇の寂しい人の描写がうまくて、今作では「あじさい心中」がそれに当たる。解説でも書かれているが、今作は3作の少し長めで読み応えのある作品と、他3作の短くパッとオチに持って行く3作が収められており、やはり前者の3作が読ませる、ぐっとくる。「薔薇盗人」は最初とっつきにくい作りだったけど、段々と、あぁ、憎い作り方するねぇ、と思わせる。ただ、“切ない話し”ではないので、軽いのだけど。でも短編集ではやっぱり今ひとつ物足りない。次はじっくりと長いやつにどっぷり浸かって読みたいです。