池上永一「テンペスト」
先月までNHKBSプレミアムで放送されていたドラマ「テンペスト」。仲間由紀江さんはじめキャストがみな適役で、沖縄の景色の素晴らしさも堪能できました。ただ、後半は怒涛過ぎる展開で、もう少し回数が多かったらね~、というのが残念。でも、あまり知られていない琉球王国の歴史や暮らしの様子などを知るいい機会になったと思います。さっそく原作を図書館でゲット。著者は、ファンタジー小説でデビューされたということで、この作品も歴史小説というよりは、ファンタジー系エンターティンメントというべき。史実の骨格は崩していないけれど、ファンタジー要素がアチコチにちりばめられている、という感じ。文体は現代調でテンポがよい。(軽すぎて格調がない、ともいえる)なので、歴史小説は苦手、という方にはラクラク読めます。(逆に、本格的な歴史小説を期待すると、怒りたくなるかも)ストーリー展開がまさにジェットコースターなので、飽きさせずに読ませます。主人公の真鶴が、父の野望をかなえるため宦官と偽って琉球王国の科試(キャリア官僚試験)を受ける。(当時、琉球王国では、女性は試験を受けられなかった。そのため、真鶴は去勢した宦官として試験を受けた)真鶴は幼いころから学問好きで、試験をらくらく突破、王国の官僚として大活躍する。しかし、波乱万丈(ほんとにいろいろありまして)、罪に落とされ流刑にされるが、今度は、女として王宮に戻り、国王の側室となる。真鶴のまわりを取り巻く男性キャラは、ライバルの朝薫や、真鶴がひそかに恋をする薩摩藩士浅倉など、なかなかステキ(笑)。しかし時代は江戸末期。明治政府へと変わり、琉球王国にもついに最後のときが訪れます。琉球王国エンディングの歴史ドラマであると同時に、一人の少女が決してあきらめずに、希望をもって道を切り開いていくサクセスストーリーでもあります。ラストは、王国は形としては滅びてしまうけれど、琉球の魂は永遠に続く、と結びます。(この辺は、ヤマトンチュとしては、かなり心苦しいところです。)でも、個人としての真鶴にはハッピーエンドを予感させるエピソードが用意されているので、幸せな気持ちで読み終われるでしょう。ますます沖縄が大好きになること請け合い。沖縄好きな方、琉球王国に興味のある方におすすめ。原作を読んでドラマを見ると、よりわかりやすい。(来年には、映画も公開予定とか!)【送料無料】テンペスト 上(若夏(うりずん)の巻)価格:1,680円(税込、送料別)【送料無料】テンペスト 下(花風の巻)価格:1,680円(税込、送料別)