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遊心六中記

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2016.10.28
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カテゴリ:観照


今年は伊藤若冲の生誕300年
ということで、「若冲」への関心が高まっています。
冒頭の写真は、いまならどこでも入手できる展覧会PRのチラシです。
 
10月12日(水)、展覧会が始まって1週間目の平日だったせいか、比較的会場は静かに絵を鑑賞できるくらいでした。それでも若冲人気なのか、それなりの来館者数で展覧会の平日開催では多い方かなと感じた次第です。
  前売入場券
チラシのメインに使われている2枚の絵は、京都市美術館の正面にも拡大絵がかかげられています。この2枚は通期で見る事ができる絵です。どちらも個人蔵のものだとか。
右は「老松鸚鵡図」(ろうしょうおうむず)です。今ではオウムと表記するのが普通ですから「鸚鵡」の漢字を見て「おうむ」と即座に読む人の割合はどの程度なのか・・・ということが気になるくらいです。絵を見ればわかるからでしょうが、表示の説明文にはルビは振られていなかったと思います。この漢字を読めと言われれば読めますが、書けと言われれば私は万歳です。江戸時代の知識人はあたりまえのようにすらすらと漢字を書いたのでしょうね。

この絵は、若冲の有名なシリーズ作品「動植綵絵」の中の一幅「老松鸚鵡図」と関連するようです。

 
これは、2007年に京都にある大本山相国寺境内にある相国寺承天閣美術館で開催された「若冲展」の図録です。久しぶりに手許の購入図録を開いてみました。この時は、「開基足利義満600年忌記念」として若冲展が開催され、「動植綵絵」の全作品の展示があったと記憶します。

今、併行して同館では「生誕300年記念 伊藤若冲展」が12月4日まで同様に開催されています(資料1)。今は「動植綵絵」をコロタイプ印刷による複製品で30幅一堂に展示をされているようです。現時点では未訪なので期間内に行ければ・・・と思っていますが。

冒頭の写真にある「老松鸚鵡図」は鸚鵡が隻で松の細い枝に止まり、枝の向こう側に鸚鵡が居る図です。そして、絵の右下には降り落ちる滝が胡粉で描かれています。鸚鵡の姿を胡粉の濃淡で細密に羽根一枚一枚を描き込んでいるのはすごくリアルな感じです。
「動植綵絵」を見ますと、滝は絵の左下にほぼ同様に対称的に描かれています。こちらは鸚鵡が双、つまり番としてもっと太い枝に止まり枝が鸚鵡の体を横切ってはいませんが、この絵と同じ頭の向きで描かれています。また、こちらには左斜め上の松の細枝に青いインコが隻で止まり、松の枝の向こうにとまっている図になっています。青いというのは実は緑色なのですが。承天閣美術館にも出向かれて、見比べるとおもしろいと思います。鸚鵡の描き方はほぼ共通したタッチです。

左の絵は、「竹に雄鶏図」です。

美術館前に掲げられたこの絵は上掲チラシの文字が重なった部分が絵としてみえるようになっていますが、一幅の全体図からみると、若冲の落款が竹枝の右側に押された所から上部や、鶏の足の先の下辺がカットされた部分図です。

「若冲の京都」展を鑑賞した第一印象は、今回の展示品が若冲の墨画の掛幅が主体だったことで、若冲の彩色画にみる鮮やかなリアル感を味わえる絵が少なかったことです。数多くの墨画の中で、鶏を描いた掛幅がずらりと展示されているのはやはり若冲!という感じがしました。ほぼ完全同一という絵は一幅もありません。鶏の様々な動き、姿態が描かれています。鶏の頭部を正面から捕らえて描いた作品が、会場で入手した展示期間リストによれば、11月6日までは2点、それ以降は3点見ることができます。
私は、ここに掲載の他に、「箒に雄鶏図」を見ました。図柄を変えていること、鶏の羽根の描き方や濃淡の付け方がけっこう違うのです。顔の表情も微妙に違っていておもしろい。会期後半には「柳下雄鶏図」が加わるそうです。図録で見ると、これは鶏が少し細身で描かれています。
もう一つ、鶏図での印象は、墨絵の鶏図にはかなり細密にえがかれたものから、ラフなタッチで瞬間的な鶏の動きの描写を重視した絵まで、様々なヴァリエーションの鶏図を楽しめることです。これは数枚の絵の展示を見るだけでは味わえないところです。

同じ事が鯉の絵にも言えます。「鯉図」の掛幅がズラリと並べて展示されている壁面があります。鑑賞した日には、リストを改めてみると12点展示されていたようです。会期中に一部入れ替えがあるようです。
なぜ、鯉の絵が多いのか?
「新しく生まれた男児が、鯉が龍に変容するのと同じように、すくすくと育って出世することを、親たちが望むから」(図録説明文より)とのことで、若冲は求められれば快く鯉の絵を描いてあげたそうです。
類似図柄の鯉図が5点、並べて壁面に掛けてあります。類似の姿態なのですが、仔細に観察してみると、背びれ、尾ひれ、胸ひれ、鱗などの描き方、細密度合い、濃淡などが微妙に変化し、そのヴァリエーションを楽しめるという面白さがあります。

 
これは今回購入した図録の表・裏表紙です。
今回、布袋図も複数展示されていますが、図録を買う前に会場で一番惹かれたのがこの「布袋図」でした。若冲がこんな絵を描いていたのか・・・・という発見! 若冲にも遊び心がかなり内奥には溢れていたのだな、という思いです。

 
2000年には、京都国立博物館で、「特別展覧会 没後200年 若冲」が文化財保護法50年記念事業として開催されました。これはその時に購入した図録の表・裏表紙です。
この展覧会のときに眺めた「百犬図」(絹本着色)は今回の展覧会では11月15日以降に展示替えで出品される予定のようです。可愛らしい戯れる子犬の群犬図である百犬図とは全く異なり、今回の図録の裏表紙にも使われている「蝶に狗子図」の子犬の描き方はほんのわずかの線描でありながら、飛んできた蝶を見上げる子犬の不思議そうな表情がうまくキャッチされている。緻密にリアルに描く一方で、さらりと即興で描いたような絵の中に、若冲の飄逸な側面を垣間見えておもしろい。百犬図の一部分は、京博の展覧会図録表紙の左下に3頭の子犬群像で載っています。
この図録の上部に蝶や蟷螂の絵が載っているが、この11月6日までは、今回の展覧会の中で、「糸瓜群虫図」(絹本着色・細見美術館蔵)に違った形で見ることができます。糸瓜(へちま)の木に群がる様々な虫たちが細密に描かれています。。

これ冒頭のチラシの裏に掲載の絵の引用です。右の絵はここに記す蝶を見上げる子犬の絵の全体図です。縦横の省略された線描の竹垣が逆に竹垣の存在感を出しています。その先に蝶が・・・。左の「波濤鯉魚図」はまさに龍門を目指す鯉の半身が飛び出してきたかの如く、長方形の画面に描かれています。並んで見られる鯉図の中では、少しパターンを異にした図です。若冲が晩年に描いた作品の一つだとか。


チラシから借用した障壁画の大作は今回の会期後半の展示される予定で展示では2つが併存することはありません。「象と鯨図屏風」は11/8~11/2で、「樹花鳥獣図屏風」は11/22~12/4の予定です。

MIHO MUSEUM所蔵の「象と鯨図屏風」の実物を見た記憶はありません。今回、それと「樹花鳥獣図屏風」(静岡県立美術館所蔵)が出展されるそうです。こちらには同じ技法で描かれ、同種の図柄で細部について相違のある屏風がもう一つあります。それは、エツコ・ジョウ プライスコレクション所蔵のもので「鳥獣花木図屏風」です。「没後200年若冲展」では、その会期中にいずれも展示品となっています。多分、入れ替え展示だったのだろうと思います。どちらを鑑賞したのか・・・・記憶は不鮮明です。

 
これは2006年京都国立近代美術館で開催された「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」展を鑑賞したときに購入した図録です。
少なくとも、この展覧会の折にも「鳥獣花木図屏風」が来日しています。図録にこの屏風が収録されています。

今回改めておもしろいと思ったのは、京博での展覧会の図録とこの図録に同じ鶏の絵が使われていることです。今まで意識していませんでした。「紫陽花双鶏図」と称される作品の部分絵です。

 
これは、2003~2004年にかけて各地の高島屋を会場にして開催された「若冲と琳派」展の図録です。副題は「-きらめく日本の美-細見美術館コレクションより」です。
この表紙に使われているのが、「雪中雄鶏図」の部分図です。
この紙本着色の絵は、11/6までの展示作品です。

この絵を眺めると、鶏が実に写実的に描かれているなと感心するばかりです。私を含め多くの人は多分そうだろうと思います。一方、専門家の佐藤康宏氏の見解が、今回の展覧会図録末尾の作品解説に紹介されています。それは、中国南宋から元末の禅僧の描いた「竹鶴図」を例にあげた読み解きです。引用させていただきます。
「本図は文・武・勇・仁・信の『五徳』をもつ鶏という存在を象徴的に扱うものであり、また、そればかりでなく、雄鶏の周囲に配された竹や菊も、古来、高潔な人格の象徴として扱われてきたものであったから、単に冬の日の雄鶏の生態を描いているようにみえる本図も、『世俗を離れ、風雪に耐え、ひとり自己の信じる道を追及する求道者』のアレゴリーだとする魅力的な解釈を呈出している。
 奇妙な佶屈(きっくつ)をみせる竹は自然のままの表現とは思われず、若冲の表現的欲望によるデフォルメであるにちがいない」(図録,p194)

尚、『若冲と琳派』図録でこの絵に付された説明文も引用させていただきます。
「鶏の漆黒の尾や羽の描写が写実的に描かれる一方、本来はまっすぐな竹が、ここではジグザグに折れ曲がり、絡み合い、奇妙な姿を呈している。また降り積もった雪は、ところどころとけたような様をみせ、下の竹や菊の葉をのぞかせている。これらの造形性は、以後展開される若冲の独創的な画風や超現実的な世界を予感させている。款記『景和』の号により若冲と名乗る以前の初期の作とわかる」(図録、p82)

「雪中雄鶏図」は、11/8以降は、「雪柳雄鶏図」、「雪梅雄鶏図」(京都・両足院蔵)と入れ替わる予定のようです。

もう一つ、特徴的だと感じたのは、鶴図が6点展示されていたことです。
通期で展示される「松梅双鶴図」の他の鶴図との描法並びに姿態のコントラストのおもしろさです。
「松梅双鶴図」は鶴の頭頂部分に朱色、鶴の胴体にさらりと薄く胡粉を使う以外は墨の濃淡で描かれた水墨画風の絵です。鶴の描き方は胴体の羽はその質感を表す程度のタッチですが、頭部、嘴、脚部、尾羽などは細密にリアルに描かれています。一方、出展の他の鶴図は、墨画で省略と細かな描法を併用したものです。鶴の捕らえ方と描写の違いが楽しめます。図録を見る限りでは、後期にはさらに違った描法の鶴図が加わるようです。

最後に、私の印象に残る作品をいくつかご紹介しておきましょう。会場に行かれてどう感じられるか、ご自身でご覧ください。

「鶏図押絵貼屏風」 六曲一双 細見美術館蔵  11/13まで
  墨画です。墨の濃淡だけで、勇ましさ、猛々しさを感じさせる力強い鶏に迫力を感じます。濃淡の使い分けが全て異なる描き方で見応えがあります。

「乗興舟(じょうきょうしゅう) 巻物 紙本拓版 京都国立博物館蔵
  伏水口(=伏見口)から淀川を舟で下り大阪に至る景観を描いたものを版木に起こして、して「石摺」技法で拓版にしたもの。普通の版画とは異なる風趣があります。簡略な絵ですが、ゆったりとした雰囲気がなかなかいいものです。

「寒山拾得図」 紙本墨画 一幅  10/30まで
  2つの卵が並び、その上に頭頂部に髪の毛がなく周辺部に無造作に伸びた髪の毛が描かれて居ます。左側の卵から右手首だけが出ていて経巻を持ち広げているのが見えます。それで寒山拾得と推測できるという奇妙な構図です。だからこそ、インパクトがあるとも言えます。こんな寒山拾得図、初めて見ました!
  「没後200年若冲」展で展示されたギッター・コレクションの「寒山拾得図」も変わった構図でしたが、まだ一方のやさしげな顔が描かれていました。こちらはそれ以上に奇抜です。禅問答には好材料の絵かもしれません。

「布袋渡河図」 紙本墨画 一幅  京都・大光明寺蔵
  極端に大きな袋がでんと描かれていてよく見ると、その下に墨染めの衣を端折り、背中に袋を載せ、お尻を丸出しにして腰を折った後姿の人物が描かれている絵です。中央右寄りに杖の先端部らしき奇妙な折れ曲がったものが見えます。袋の形、大きさから布袋様と推測できる図。発想は上記「寒山拾得図」に通じるところがあります。実に人間味あふれる布袋様。そこが印象的です。

「象図」 紙本墨画 一幅 東京富士美術館蔵
  象を正面から描いた絵です。その姿形は、「樹花鳥獣図屏風」に描かれた白象に通じるところがあります。両耳の表現方法が異なりますが、ほぼ同じ図柄とみて間違いない絵です.何らかのつながりがあるのでしょう。残念ながら、この絵と屏風絵を同時に見る重なりの時期は設定されていません。

 若冲の描いた絵の世界が「若冲の京都 KYOTOの若冲」をみて、さらに広がりました。


 断続的に、この続きを書き込みたいと思います。生誕300年、別の切り口をさらに楽しみたいところです。

参照資料
1) 開催中の展示 生誕300年記念『伊藤若冲展 』 :「承天閣美術館」

補遺
伊藤若冲  :ウィキペディア
生誕300年若冲の京都 KYOTOの若冲:「MBS - 毎日放送」
  作品情報として、絵が載せてあります。
あの人の人生を知ろう~伊藤 若冲 :「文芸ジャンキー・パラダイス」
若冲作品はどこで観ることができる?今後の展示会開催予定と一緒にまとめてみた
  :「MONOTABI」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

​​(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

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Last updated  2018.09.10 00:38:53
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