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カテゴリ:観照 & 探訪
本堂を東側に回り込みますと、本堂の東面に添って観音石仏が一列に配置されています。 本堂の東面を北から眺めた景色 本堂の東側、石仏の傍に設置された案内板 通路を挟み、東側に並ぶ観音石仏(北側からの眺め) 石標の刻字を判読できません。 南側からの眺め 南無阿弥陀仏かな? 本堂の北面に回り込み、通路の途中で振り返った景色 本堂の北から西側に回り込みます。 三尊仏をレリーフした石仏が目に止まりました。 三尊仏の続きに、本堂の西側に並ぶ観音石仏を北から眺めた景色 こちらには、「西国三十三所観音石仏」の石標が建てられています。 本堂を南西側から撮った景色 これで、観音石仏巡りは一応終わりです。 序でながら、私の頭の整理を兼ねた覚書をまとめておきたい所存です。 「観音菩薩」は、正しくは「観世音菩薩」あるいは「観自在菩薩」と称されます。 『法華経』の「観世音菩薩普門品第二十五」では、「観世音菩薩」と表記されています。 一方、『般若心経』の冒頭は、「観自在菩薩 行深般若波羅密多時 照見五蘊皆空」から始まります。この「観自在菩薩」です。(資料1) この観音菩薩は、六観音と称されるように、造像されるときには異なる形式で表現されます。ふつうに観音といえば、「聖(しょう)観音」です。そして、「如意輪観音」「十一面観音」「千手観音」「不空羂索観音」「馬頭観音」という姿でも表現されます。真言系では、不空羂索観音の代わりに「准胝観音」を加えて六観音と称されます。結果的に、七観音の姿で造像された仏像の形式を見ることになります。(資料1) 法隆寺の聖観音像には、夢違観音・救世観音・百済観音という愛称/通称で呼ばれる有名な仏像があります。 観音菩薩は勢至菩薩とともに、阿弥陀如来の脇侍となり、阿弥陀三尊像として目にすることが多い菩薩像です。 如来は衆生に対して悟りの法を説きます。一方、観音は衆生に現世利益の救済を施す存在と位置づけられています。それ故、観音菩薩が独自に信仰の対象となり、観音信仰が広まっていったのでしょう。 西国三十三所の札所の本尊は、これら七観音のいずれかが本尊として祀られています。 括弧内は通称と札所の番号です。(資料2,3) 聖観音 :穴太寺(穴穂寺、菩提寺、21)、一乗寺(26) 成相寺(成相さん、28) 計 3寺 如意輪観音 :青岸渡寺(那智山寺、1)、龍蓋寺(岡寺、7)、石山寺(13) 園城寺・観音堂(三井寺、14)、頂法寺(六角堂、18) 圓教寺(西の比叡山、27) 計 6寺 十一面観音 :金剛宝寺(紀三井寺、2)、長谷寺(初瀬寺、8)、六波羅密寺(17) 観音寺(今熊野観音寺、15)、長命寺(31) 華厳寺(たにぐみさん、33) 計 6寺 千手観音 :粉河寺(3)、施福寺(槇尾寺、4)、葛井寺(藤井寺、5)、清水寺(16) 南法華寺(壺坂寺、6)、三室戸寺(御室戸寺、10)、総持寺(22) 正法寺(岩間寺、12)、行願寺(革堂、19)、勝尾寺(弥勒寺、23) 清水寺(播州清水寺、清水さん、25)、観音正寺(仏法興隆寺、32) 善峯寺(よしみねさん、20)、長命寺(31) 計 14寺 不空羂索観音:興福寺・南円堂(9) 計 1寺 馬頭観音 :松尾寺(まつのおさん、29) 計 1寺 准胝観音 :醍醐寺 上醍醐・准胝堂(11) 計 1寺 まとめてみると、西国三十三所では、千手観音が一番数多く祀られています。 また、上記「観世音普門品」では、仏は無尽意菩薩に語ります。(資料4) 「・・・・若し国土ありて、衆生の、応に仏の身を以て度(すく)うことを得べき者には、観世音菩薩は即ち仏の身を現して、為に法を説くなり。」から始まり、衆生に応じて観音菩薩が変化して、衆生の前に現れる姿を列挙説明していきます。経典によれば、観音菩薩は三十三の化身に変化すると説いています。 瀬戸内寂聴さんは、それを整理して、自著に次のように記されています。 「聖者の三身」「天界の六身」「五種の人身」「四衆の人身」「四種の婦女身」「童男童女の二身」「八部身」「一身」の三十三身です。相手によって、相手のわかる方法、相手に最も必要な姿に化身して現れて法を説くというのです。(資料5) 西国三十三所の三十三という数は、この三十三身に合わせた数のようです。 そして、この三十三身に付会、つまりこじつけて俗信の観音を列挙したのが「三十三観音」です。(資料6) その中で、白衣観音が一番知られているのではないでしょうか。楊柳観音、龍頭観音、滝見観音、魚藍観音、水月観音などを仏像あるいは図像で目にしたことがあります。 次回は境内探訪のつづきをご紹介します。 つづく 参照資料 1)『図説 歴史散歩事典』 監修 井上光貞 山川出版社 2) 西国三十三所巡礼の旅 ホームページ 3) 西国三十三所 :ウィキペディア 4) 『法華経 下』 坂本幸男・岩本裕 訳注 岩波文庫 p252 5) 『寂聽 観音経 愛とは』 瀬戸内寂聴著 中公文庫 6) 三十三観音 :「コトバンク」 補遺 観音菩薩 :ウィキペディア 聖観音菩薩 :「MOA美術館」 聖観音立像 :「奈良国立博物館」 大宝蔵院と百済観音堂 :「法隆寺」 如意輪観音坐像 :「e國寶」 十一面観音立像 :「e國寶」 千手観音像 :「e國寶」 東大寺不空羂索観音立像 :ウィキペディア 目黒の馬頭観音 :「目黒区」 秘仏・馬頭観音菩薩立像(大安寺) :「祈りの回廊」 准胝観音 :ウィキペディア 霊山観音 :「京都観光Navi」 魚藍観音 :「五島の島たび」 全知全能感??美しすぎる仏像、水月観音像! :「ミライノシテン」 木造 観音菩薩坐像 :「横須賀市」 ← 通称、滝見観音 楊柳観音 :「大安寺」 ネットに情報を掲載された皆様に感謝! (情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。 その点、ご寛恕ください。) 観照&探訪 奈良散策 -1 吉城園 ふたたび へ 観照&探訪 奈良散策 -2 依水園(1) 寧楽美術館・清秀庵・挺秀軒ほか へ 観照&探訪 奈良散策 -3 依水園(2) 氷心亭、後園(柳生堂・水車小屋ほか)へ 観照&探訪 奈良散策 -4 依水園(3) 寄付、挺秀軒、前園、三秀亭 へ 観照&探訪 奈良散策 -5 般若寺(1) 往路点描、楼門、紫陽花と本堂 へ 観照&探訪 奈良散策 -6 般若寺(2) 笠塔婆・一切経蔵・十三重石宝塔・石仏 へ 観照&探訪 奈良散策 -8 般若寺(4) 3供養塔、鐘楼、平和の塔、石造物群 へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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