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カテゴリ:観照
![]() ![]() 11月10日(木)に、掲題の特別展「京に生きる文化 茶の湯」を鑑賞してきました。 まずは、その覚書を兼ねてのご紹介です。 ![]() 先月から始まったこの特別展は12月4日まで開催されています。 ![]() 博物館南門の傍の壁面にも大きなパネルが掲示されています。 ![]() ![]() 入口から正面アプローチを北にある平成知新館に向かいます。 いつものように、明治古都館の全景を東に眺めつつ・・・・。 ![]() ![]() 大きなパネルがここにも恒例のお出迎え。そして、平成知新館の館内へ、いざ。 ![]() 1階エントランスの正面奥にはこの記念撮影用を兼ねた巨大パネルがいつものように。 この特別展で撮影できるのはここまでです。 ![]() 「京都国立博物館だより 2022年10・11・12月号」の表紙 3つ折A4サイズ 公開されているPRチラシとこの博物館だよりの写真を一部引用しつつご紹介します。 ここまでの画像に、この特別展でのハイライト作品が幾つか出ています。 七条通に面した歩道傍のパネルから1階正面奥のパネルまで、繰り返し出ている書(墨蹟)は、「序章 茶の湯へのいざない」に展示されている国宝の「虚堂智愚墨蹟 法語(破れ虚堂)」(東京国立博物館蔵)。これは前期展示のため拝見できませんでした。 展示替えがあり、拝見できたのは同じ国宝の「古林清茂墨蹟 月林道号」(京都・長福寺蔵)。師が弟子に道号を授けるというもので、「月林」が大きく力強く墨書されていて、その左に偈頌が添えられています。 「法語(破れ虚堂)とセットになっている茶碗は、これも国宝の「大井戸茶碗 銘 喜左衛門」(京都・孤篷庵蔵)です。こちらは通期展示です。博物館だよりの表紙中央にも載せてあります。 松平不昧が「天下三井戸」と称した茶碗の一碗がこれだそうです。 パネルや博物館だより(表紙下部)に人物郡が出て来ます。これは狩野秀頼筆の国宝「観楓図屏風」ですが、前期展示品で、残念ながら見られませんでした。 後のいくつかは順次ご紹介します。 ![]() ![]() この特別展の図録『特別展 京に生きる文化 茶の湯』 左が表紙で、右が裏表紙です。シックな印象を抱く表紙。 この図録も適宜参照していきます。 この特別展は「序章 茶の湯へのいざない」「第1章 喫茶文化との出会い」「第2章唐物賞玩と会所の茶」「第3章 わび茶の誕生と町衆文化」「第4章 わび茶の発展と天下人」「第5章 茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人」「第6章 多様化する喫茶文化 煎茶と製茶」「第7章 近代の茶の湯 数寄者の茶と教育」という構成です。 茶の文化史を知り、京の茶の湯文化とその美意識に触れることがテーマになっています。 章名からわかりますが、千利休の肖像(掛幅)が展示されているのは第4章で、利休ゆかりの作品展示が当然ながら増えます。 余談ですが、京都国立博物館での「茶の湯」に関係した大々的な特別展は久しぶりだと思います。 手許には、 ![]() ![]() この図録『特別展覧会 日本人と茶 その歴史・その美意識』があります。 2002年秋に鑑賞しましたので、私の記憶では今回の特別展は20年ぶりの企画だと思います。 ![]() 当時のPRチラシを保存していました。これがそれです。 20年前のこの特別展覧会は、9つのテーマで構成されていました。 「第1章 喫茶日本渡来」「第2章 入宋・渡来僧と茶」「第3章 喫茶のひろがりと遊興化」「第4章 東山御物と君台観左右帳記」「第5章 わび茶の系譜」「第6章 町衆の茶」「第7章 大名茶の流れ」「第8章 喫茶の大衆化」「第9章 煎茶の世界」です。 この時も、茶の文化史という流れは同じですが、茶と日本人の関わりを広く総合的に捉えてみるという視点でした。 今回は、茶の文化史が、京都での茶の湯文化にフォーカスをあてる形に絞りこまれた感じです。 今、改めて20年前の図録を通覧し、今回の図録と対比しますと、類似の視点とはいえどもテーマ設定の違いで、共通する展示品と共通しない領域の展示品がかなり異なり、茶の湯文化史の広がりと奥行を感じています。 共通する展示として、例えば、今回の「序章 茶の湯へのいざない」では、後期に「無凖師範墨蹟 二大字 茶入」(東京・五島美術館蔵)が展示されています。「茶入」という二字が大きく雄渾に墨書されています。20年ぶりにこの掛幅を拝見することになりました。2002年には、「第2章 入宋・渡来僧と茶」のセクションで、「禅院牌字『茶入』」(五島美術館蔵)と題して通期展示されていました。 この二文字は禅院の堂舎に掲げる額字・牌字の原字だそうです。2002年の図録には、「茶入とは禅院の来賓・来客に対して茶の接待をする役目のことをいう」と説明しています。今回の図録では、原字という点の説明は同じですが、「茶入」の二文字についての説明に違いがあります。「『茶入』とは茶の湯で抹茶を入れる容器であるが、ここでの意味は不明。禅院の来賓・来客に対して茶の接待をする役目とする説もあるが、禅林の機構や日常生活について規定した『清規』には『茶入』は見られない。」と一歩踏み込んで解釈を変えています。拝見していて気づかなかったのですが、この二文字は一紙一字を貼り合わせてあるそうです。『東福寺文書』には46点の額字についての目録が保存されているそうです。そこから、「本墨蹟は、『煎茶』『入室』を裁断し一幅としたものか」という解釈が加えられています。興味深いものです。 上記「大井戸茶碗 銘 喜左衛門」もまた2002年の図録の第7章に掲載されています。 一方で、例えば、2002年には「第8章 喫茶の大衆化」で喫茶に関係した浮世絵が展示されていました。今回はその側面は対象になっていません。 さて、「序章 茶の湯へのいざない」について、もう少しご紹介します。 ![]() 上掲のパネルには、この作品が一つのハイライトになっています。 通期展示されている作品。「唐物文琳茶入 酸漿(ほおずき)文琳」(ヤング開発株式会社蔵) 文琳とは林檎(りんご)の別名です。 「徳川家康が所持し、姫路酒井家に伝えられてきた大名物の茶入」(博物館だよりより)で、元和2年(1616)に家康に謁見した酒井雅楽頭忠世が拝領した茶入だとか。 今回の展示では第5章に関係する作品ですが、序章での「いざない」として展示されています。 ![]() 同様に、この「ムキ栗」という銘を持つ長次郎作黒楽茶碗は、「第4章 わび茶の発展と天下人」に直結する作品ですが、「いざない」としてここに展示されています。 四方形のおもしろい茶碗です。利休好みの一つの形だそうです。茶碗を持つ感触がかわるでしょうね。 与次郎作「万代屋(もずや)釜」(京都・今日庵蔵)も同様です。 「佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則」(重文、文化庁蔵)という掛幅や、「青磁貼花牡丹唐草文瓢形瓶(ひさごかたへい)銘 顔回」(京都・曼殊院蔵)が展示されています。青磁の色が素敵です。青磁にも色々な色調のものがありますが、この瓢形瓶の色合いが一番好きです。 それでは第1章のセクションへ進みます。 つづく 参照資料 *図録『特別展 京に生きる文化 茶の湯』 京都国立博物館 2022 *「特別展 京に生きる文化 茶の湯」出品一覧・展示替予定表 *京都国立博物館だより 2022年10・11・12月号 *図録『特別展覧会 日本人と茶 その歴史・その美意識』 京都国立博物館 2002 補遺 京都国立博物館 ホームページ 無準師範 :ウィキペディア 無準師範墨蹟 「茶入」二大字 :「五島美術館」 無準師範墨跡 「帰雲」 二大字 :「MOA美術館」 万代屋釜 :「茶道入門」 青磁 :「コトバンク」 青磁 :ウィキペディア 青磁貼花牡丹唐草文瓢形瓶 :「岡田美術館」 青磁牡丹唐草文瓶 :「MOA美術館」 ネットに情報を掲載された皆様に感謝! (情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。 その点、ご寛恕ください。) 観照 京都国立博物館 -2 特別展「京に生きる文化 茶の湯」(2) へ 観照 京都国立博物館 -3 特別展「京に生きる文化 茶の湯」(3) へ 観照 京都国立博物館 -4 特別展「京に生きる文化 茶の湯」(4) へ 観照 京都国立博物館 -5 噴水のあるエリアと西の庭の散策 へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.11.22 09:15:14
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