|
カテゴリ:観照
=== 2023.1.17 ===
9時45分頃に取った南の空です。曇り空です。 東方向の空 南西方向の空 西方向の空 ベランダから見える空全体が曇っていました。雲の姿は方向によってやはり異なります。 南の空 12時半頃には青空に変化していました。 東方向の空には白い横雲がたなびいています。 南西方向の空 西方向の空 さて、雲がたりのつづきです。『新古今和歌集』巻第四で抽出した歌から始めます。 雲間よりほしあひの空を見渡せばしづごころなき天の川波 祭主輔親 317 この歌には「七月七日、七夕祭する所にてよみける」という詞書が付いています。これを読むと、ぐっと歌意がわかりやすくなります。古語辞典に「ほしあひ(星合ひ)」が載っています。陰暦七月七日の夜、牽牛・織女の二星が夫婦の語らいをするということの意。「しづごころ」は静心で、静かな心、落ち着いた心の意。なので、「しづこころなき」はせわしなく騒いでいるの意味に逆転します。 (雲の間の七夕の空を見渡すと、牽牛と織女が逢瀬を急ぐからか、天の川がせわしなく騒がし気に波立っているように感じるなぁ) たつた山夜半にあらしの松吹けば雲にはうときみねの月かげ 左衛門督通光 412 「風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君が一人こゆらむ」(古今・994)を本歌とするとか。「あらしの松吹けば」は、山風が松の間を吹き抜けていくという意でしょう。「雲にはうとき」は、雲には全く関係ないということで、雲には少しも妨げられないの意。「月影」は月の光。月明かりの意。 (立田山に夜更けに強い山風が松の間を吹き過ぎれば、雲には少しも妨げられずに、月の光が輝いていることよ) 横雲の風にわかるるしののめに山飛びこゆる初雁のこゑ 西行法師 501 「横雲」は横にたなびいている雲。「わかる(別る・分かる)」は古語辞典によれば、遠く離れて会うことができなくなる。死んで、会えないようになるの意。「風にわかるる」は、風に吹かれて山から離れるの意。山から離れて行けば、再び山とその雲が会うことはできないですね。「しののめ」を辞書で引くと、夜明けがた。早朝の意。気づいたことは、しののめは漢字で「東雲」と記すこと。この歌には雲という漢字が2つ入っていることになります。「初雁」は、(その秋に)はじめて、北方から渡ってきた雁(がん)です。 (風が吹き横雲が山から離れて行くのが見える夜明けがたに、山を飛び越える初雁の声が聞こえてきた) 吹きまよふ雲ゐをわたる初雁のつばさにならす四方の秋風 皇大后大夫俊成女 505 「吹きまよふ」は、風の吹き荒れるの意。「雲ゐ」は雲居で、空の意。「四方の秋風」についてです。参照文献によりますと、『源氏物語』の「須磨」に「枕をそばだてて四方の嵐を聞きたまふに」という一節があり、そこから「四方の秋風」というフレーズが作られたと言います。そこに藤原俊成女の教養が反映しているということなのでしょう。 (吹き荒れる空、四方から吹く秋風の中、馴れない翅をならしつつ雁が飛んで行く) 鵠の雲のかけはし秋暮れて夜半には霜や冴えわたるらむ 寂蓮法師 522 「鵲(かささぎ)の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜は更けにけり」という家持の歌を本歌にしているそうです。「家持集」に載る歌です。有名な歌です。一方、この歌自体が新古今の第620首として収録されています。「鵲の雲のかけはし」は、七夕の夜、鵲が天の川に渡す空の橋です。「秋暮れて」は、秋も終わり近くなっての意。「冴えわたる」は、一面に凍るの意。寂蓮(1139年頃~1202年)は平安時代後期から鎌倉時代初期、大伴家持(718年頃~785年)奈良時代後期の歌人です。 (鵲が天の川に渡す空の橋は、晩秋の夜中には冷たい霜を一面に置いているのだろうか) === 223.1.18 === 9時半過ぎに撮った南の空。昨日とはうって変わり青空にほんわり雲が浮かんでいます。 東方向の空は頻度の高いケースですが、グレーの雲が稜線の上を覆っています。 南西方向の空 西方向の空 13時半頃の南の空。グレーの雲が広がりつつあります。 東の空 稜線上には、大きなグレーの雲がかかり、その上には青空が見えます。 南西方向の空 西方向の空 南の空 17時過ぎに、もう一度空を眺めに出ると、グレーの雲の姿は大きく変化しましたが、青空には薄いベールが架かったような感じです。 南西方向の空 西方向の空 南西から西の方向も同様です。 東の空 13時半頃の雲と17時過ぎの雲とでは、雲の姿が大きく変化しています。 勢いのあるグレーの雲が離れて行き、穏やかなグレーの雲の漂いに変化した感じです。 雲がたりのつづきです。巻第六に移ります。 月を待つたかねの雲は晴れにけりこころあるべき初時雨かな 西行法師 570 「月を待つ」は月の出を待つ。「たかねの雲」は高嶺の時雨雲。「こころあり」は思いやりがある。「こころあるべき」は、思いやりがあるに違いないの意。 (月の出を待っていると、高嶺の雲が初時雨を降らせたがたちまち止み、空が晴れたよ。月を眺めたい私の心を知ってくれている思いやりのある初時雨に違いない) 世の中に猶もふるかなしぐれつつ雲間の月のいでやと思へど 和泉式部 583 「猶もふるかな」の「ふる」は「降る」と「経る」の懸詞。「しぐれつつ」は雨がしぐれるの裏に、自分が涙を流していることを暗喩する。「雲」は時雨を降らせる雲であり、迷いや悩みの暗喩にもなっている。「いでや」は感動詞「いでや」と「出でや」の懸詞とされる。また「出でや」には月が出る意味とともに出離の意味が込められているとか。 (雲間から月が出ようと思っても、猶降りつづく時雨雲のために出られない。同様に、私は憂き世を出て出家しようと思いつつできかねて涙を流すだけの日々を送っている) 折こそあれながめにかかる浮雲の袖も一つにうちしぐれつつ 二條院讃岐 584 「折こそあれ」は折もあろうに。「ながめ」はじっと物思いに沈みながら見つめること。「袖もひとつに」は袖もともに。「打ちしぐれつつ」は、涙のしきりに落ちること。袖が涙で濡れる意もこめる。 (折もあろうに、物思いに沈みつつ眺める空に時雨雲が出ている。雲が時雨を降らせるのと一緒に、悲しさで涙がしきりに落ち袖がしぐれている) たえだえに里わく月のひかりかな時雨をおくる夜半のむら雲 寂蓮法師 599 「たえだえ」は、とぎれとぎれ。切れ切れ。「里わく月のひかり」は、里により月が照るところと照らないところがあるという意。「わく」は区別する。「時雨をおくる」は、時雨をふらす。「むらくも(叢雲)」は集まり群がっている雲。一群れの雲。 (とぎれとぎれに里によって月の光が射しているよ。夜半の叢雲が時雨を降らせるているために) 夕なぎにとわたる千鳥波間より見ゆるこじまの雲に消えぬる 後徳大寺左大臣 645 「夕なぎに」は夕方風の無くなったときに。「とわたる」は古語辞典を引きますと、「と渡る」と「門渡る」が載っています。前者は「と」が接頭語で、単に渡る意。後者は「川戸」「瀬戸」を渡る意。この歌では後者の意で、海峡を渡る。 (夕方の風が止んだときに、海峡を渡る千鳥が波間に見える小島にかかる雲の中に消えてしまったよ) 巻第四から巻第六の抽出歌から、合計9首を抜き出しました。一読して歌意を理解できなかった歌です。 また、巻第四を読み直していて、二首見落としていることに気づきました。 月影の澄みわたるかな天の原雲吹きはらふ夜半のあらしに 大納言経信 411 山の端に雲のよこぎる宵の間は出でても月ぞなほ待たれける 道因法師 414 そのままで歌意は汲み取っていただけるでしょう。二首補足させていただきます。 一方で雲の文字が入っていない第417首(式子内親王作)の歌を加えていました。これは削除です。これらの訂正をいたします。やはり・・・・ミスがありました。まだほかにもあるかも・・・・。 歌の抜き出しは、この辺りで一区切りと致します。 === 2023.1.19 === 10時前に撮った南の空。この日も青空です。 南西方向の空 西方向の空 東方向も青空の広がり 東方向の空 16時40分頃に眺めると、稜線の上に青空が見えるもののその上にはグレーの雲が覆う形に変化しています。 南の空 南西方向の空 ズームアップ 西方向の空 同様にズームアップ 地上近くに風が吹いていなくても、天空では風が吹いているのでしょうね。ほぼ同じ位置から眺めていますと、漂っているように見えても、思いのほか速い形で移動していると感じます。 つづく 参照資料 *『新訂 新古今和歌集』 佐左木信綱校訂 岩波文庫 *『新古今和歌集』 日本古典文学大系28 岩波書店 *『新古今和歌集』 上・下 久保田淳訳註 角川ソフィア文庫 *『古今和歌集』 窪田章一郎校注 角川ソフィア文庫 補遺 大中臣輔親 :ウィキペディア 十訓抄「祭主三位輔親の侍」原文と現代語訳・解説・問題|説話集 :「四季の美」 久我通光 :ウィキペディア 徒然草 第100段 :「山梨県立大学」 二条院讃岐 :ウィキペディア 女房三十六歌仙 :ウィキペディア 徳大寺実定 :ウィキペディア 新三十六歌仙図 西行法師 :「和泉市久保惣記念美術館 デジタルミュージアム」 三十六歌仙の各掛幅を見られます。 源経信 :ウィキペディア 道因法師 :「百人一首を探ろう」 【26】道因法師和歌への執心 『小倉百人一首』あらかるた :「小倉山荘」 ネットに情報を掲載された皆様に感謝! (情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。 その点、ご寛恕ください。) こちらもご覧いただけるとうれしいです。 ベランダから見た雲の変化と雲がたり 掲載記事一覧表 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.01.28 18:08:44
コメント(0) | コメントを書く
[観照] カテゴリの最新記事
|