○●●遊女asome●●○

最近、大河ドラマ『風林火山』を心待ちにしています。お目当ては長尾景虎、後の上杉謙信(Gackt氏)です。

弱冠20歳で景虎は家督を継ぎますが、実際に当時の若き景虎の風貌がどうであったかは資料に残っていません。それを逆手に、Gackt氏はNHKのスタッフと何度も確執を繰り返しながらも、徹底的に美しい景虎にこだわり、自分にしか演じることのできない景虎を演じ、景虎の内に秘める美に迫ります。
持ち前の端整な面持ちに更に化粧をほどこし、漆黒の長い髪がはらりと頬にかかり、ある時は、陰陽師、ある時は光源氏を見まごう程あでやかな装束に身を纏う、それは、それは、美しい御屋方様です。
ドラマは初出演だそうですが、なにより、その不思議な存在感に圧倒されてしまいます。景虎の演技は重臣とのやりとりが多いのですが、年配の家臣を相手に、よく響きわたる低音で話しかける威容は、とても見ごたえがあります。周りの俳優が上手ければ上手いほど、Gackt氏のミュージシャンとしての鍛え上げられた表現力が引き出され、空間に緊張感、重厚感が漲ります。背景が日本海の龍をイメージした大きな床絵なのですが、景虎の「越後の龍」のイメージに似つかわしく、その前に佇む景虎は、それだけで、絵になるのです。

揺らめく炎の中で護摩を焚き真言を唱えるかと思えば、平安貴族のように琵琶をかき鳴らす。初めて鉄砲を撃てば見事に命中。一瞬の迷いなく小刀で一刺し。何をしても、その景虎の優雅な所作振る舞いが、面白いほど鮮やかにキマッテいます。見る方も画面に釘付けになってしまいます。

「この景虎に、隠すものは、何も、ない！」と勘助に迫るシーンは圧巻でした。能面の般若のような表情には、演技以上の何かを感じさせます。まさにGackt氏自身の「荒ぶる魂」を内に秘めたような凄まじい気迫が感じられます。

Gackt氏は、8月に新潟の謙信公祭の出陣行列に参加しました。このビデオを見て、只者ではないと実感しました。あの8月の30度を超える猛暑の中、10キロ近くの甲冑を身につけ、白馬に乗り、左手で手綱をひき、右手で剣を抜き、その上、謙信の口上を述べ、ついには「みなのもの！出陣じゃあ！」の掛け声とともに、全速力で駆け抜けていくではないですか！その強靭なる精神力と体力は驚異的です。まるで上杉謙信にシンクロしているかのようで、感動的でした。謙信を上手く演じられる役者は多くいるでしょうが、何万人もの大観衆が見守る中、失敗は許されないあの状況の中で、あの振る舞いができるのは、Gackt氏しかいないのではないでしょうか。それというのも2度の震災に見舞われた上越の方々を勇気づけたい一心の参加だったそうですね。その心意気あっぱれです。ライブで鍛え上げた体力と精神力がなせる業でしょうか。見事というよりありません。

一見、華奢ですが、キックボクシングや空手など、毎日3時間も訓練して体を鍛えているそうです。この撮影のために甲冑が似合うように、9キロも体重を増やして、準備するほどの徹底振り。もともと睡眠時間も2.3時間しかとらず、肌に悪いということで炭水化物を制限し、10年間もお米を食していないそうです。生き方そのものが謙信のように、禁欲的な方みたいですね。

Gackt氏によると、謙信は私利私欲のために戦ったことは一度もなく、「この国を守り、乱世を鎮める」という目標のために己の欲を捨て、己の人生を費やした一生だそうです。自らを毘沙門天の生まれ変わりと称す神がかり的な精神状態。狂気をまとった美しさ、その中にある心の穏やかさ、決意の固さ、意志の強さ、それらすべてを内に秘めた謙信の美しさを描き出していきたいとのことです。そして何よりも謙信を通して、日本人の美徳や誇りを表現したいそうです。素晴らしいです。

これから『風林火山』は「川中島決戦」に向かいます。Gackt氏曰く、「地面を這う武田方とは対照的な、空を舞う龍のごとく麗しい上杉家・・・」を演じるそうです。
NHK広報担当者が「大河ドラマ史上に残る名場面の誕生を確信した」というシーンだそうですので、今から、期待に胸が高鳴りますね。
皆様、心して、ご覧くださいませ。

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