資産運用一千一夜

2005/05/14(土)14:34

PER水準と成長率(2)

株式投資(202)

前回に引き続き、成長率によってPER水準が変動するお話。 成長率とは、モメンタム(勢い・方向性)と密接に関係しており、 高成長の企業には、強いモメンタムがあり、 強い業績モメンタムがあるが故に、成長企業と認められます。 そして高いPERが付与されるのです。 しかしこのモメンタムに不透明感が出てきた時、 市場ではPER水準の見直しが始まります。 T&Gニーズ(4331)という企業を例に挙げてみます。 ハウスウェディングで急成長している時価総額830億の企業です。 5月12日発表の決算短信を見てみると、 <前々期業績>   売上高 :114.4億円(+117.0%)   営業利益: 15.9億円(+222.3%)   経常利益: 14.5億円(+210.0%)   当期利益:  6.7億円(+213.6%) <前期業績>   売上高 :218.3億円(+ 90.8%)   営業利益: 34.5億円(+116.5%)   経常利益: 35.0億円(+141.8%)   当期利益: 20.5億円(+203.8%) <今期業績予想>   売上高 :328.7億円(+ 50.6%)   営業利益:   経常利益: 51.5億円(+ 47.1%)   当期利益: 30.1億円(+ 47.0%) という内容になっています。(カッコは対前年期比です) 業績は毎期、大幅増収増益、過去最高を記録し続けています。 それも数%やそこらの小さい伸び率ではありません。 この業績を見て、どう思いますか? T&Gニーズの株価は、115000円。 前期実績PERでは40.5倍、 今期予想PERでは27.6倍です。 このPERは割安だと思いますか? 問題は伸び率、モメンタムです。 今期予想の50%増というのは、一般には大きな業績拡大を意味します。 1年で1.5倍です。 しかし業績推移を見れば、 この成長率がきれいに?鈍化しているのが分かります。 前々期では1年で3倍の成長をしているのです。 T&Gニーズの株価の推移を見れば分かりますが、 長い間、横ばいが続いています。 利益は大きく伸びています。 にも関わらず、株価は横ばい。 これは何を意味しているかというと、 PER水準が切り下がっていることを意味しています。 なぜPER水準の切り下げが起こっているかというと、 それは、強いモメンタムがなくなり、成長率が鈍化しているからです。 +50%成長というのは、すごい数字です。 しかし市場は、過去のもっと高い成長を前提としたPERを付与しており、 さらにこの+50%成長さえ今後継続できるのかも不透明であり、 成長率の低下に伴い、水準訂正がなされているということです。 ちなみに1年前の決算発表では、 16年3月期の予想EPSが28685.25円(10分割前)。 決算発表翌日の終値が122万円で、予想PER42.5倍。 金曜日にどこまで織り込んだかは分かりませんが、 (最近あちこちで、業績織り込みのタイムラグの話が出てますね) 単純に見てPER水準が、40倍程度から30倍弱になっています。 こういう銘柄は、保有していれば、売れない気持ちになります。 なぜなら、増収増益の優良企業で、 PERも買った時より下がっているからです。 安いと思って買ったのに、そして会社がさらに大きな利益を出しているのに、 もっと割安になっているのです。 しかしこういう状況の成長企業に投資するのは、 一般的には不利な投資になります。 モメンタムの剥落は、成長株投資では”売り”になります。 雑感ですが、T&Gニーズの主業務は結婚式関連です。 なので、マンションデベロッパーと同様に、通常数ヶ月、 時には1年以上先の予約を取るため、業績の見通しが非常に分かりやすく、 決算発表で大きなサプライズはあまり出ません。 またIRも、説明会に出たりまずまず頑張っているので、 比較的緩やかな株価水準訂正が進んでいるのだと思います。 ちなみに、マンションデベロッパーのフージャース(8907)の場合は、 途中連結になったりして単純には比較できないんですが、 えいやで見ると、 最終予想利益が、551百万→1350百万→2900百万、の期間、 予想PERが、4.1倍→17.9倍→14.4倍、 と推移しています。 これからの成長率がどう推移するのかがキーになるのではないでしょうか。 またマンションデベロッパーの場合は、もともと成長に限界のある業種なので、 (世界中をマンションで埋め尽くすまで成長する?) ある時点で成長が止まる、または縮小するのは分かっている話です。 なので、その時にどういう経営をするのかに注目したいと考えています。 (他業種に進出するのか、管理業務に専念し高配当企業になるのか、  コンサル業務で食っていくのか、いろいろあると思います) 単純に、利益が2倍になるから、株価も2倍とならないところが、 株式投資の難しいところであり、面白いところでもあり、 そして儲けのタネが埋まっているところでもあります。 以上。 今回が100回目の日記らしいです。 よく続いたものです。自分でもちょっとビックリ。

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