腐敗惑星(1)
■腐敗惑星■(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/腐敗惑星(1) ミラーは闇の中を飛んでいた。宇宙連邦の辺境、腐敗惑星の上空だ。 惑星は相もかわらずどろどろした色をしていた。そして、蠢いている。生命体が一部分生息しているなどとは、想像もつかない。 ミラーはすでに惑星に降下してあったポッドを回収していた。このポッドから、この星の情報を得ているのだ。 時々、惑星表面の腐肉によってポッド内部が侵食され情報を発しなくなる。それを発見し、収容し補修するのが、ミラーの仕事だった。 他の仕事といえば、この星への侵入者を破壊するドリフィングゲートのメンテナンス。 ドリフィングゲートには光子ミサイルが装備されている。 ミラーの現在唯一の話し相手は、この小型宇宙船のコンピュータ、ツランだけだった。このツランは女性のパ-ソナリティ設定にしてある。「この星に本当に宝があるのかな、信じられないね、ツラン」 コンピュータ、ツランは答える。「データがないんだららね。答えようがないじゃない。無理いうんじゃないよ。私はそれでなくても忙しいんだから。自分で考えなよ」「まあいいさ、独り言だよ。さあフライトデッキへ帰り、ラフラタの顔でも拝むか、あの不機嫌な顔をな」「よーく、言うよ。あなたも不機嫌な顔だよ、負けずおとらずね」 腐敗の風が、ミラーの小型宇宙船の外を吹き荒れている。 フライトデッキは降下ポッドを管理する惑星ステーション。惑星の周遊軌道に乗っている。がこのオートメーション化されたステーションには2名しか配属されていない。この星は重要視されていないのだ。 『我らは風民(フーミン)、歴史の表面にでることはない。が、我らは必ず、この星の歴史の変遷に居合わせる。連邦の監視機構の奴らは我らの存在すら、きずかぬ。が我らは生きている。存在している』 形もなく、姿もみることのできぬ意識体がこの惑星上空部に生息していた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/