■宇宙から還りし王 第15回■宇宙から還りし王(山稜王改題)第15回(1978年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ケインは、ある時はアゴルフォスの意識となり、ヘリのパイロッ トとなり、さらに長宮室の空気ともなっている自分に気づく。 が、ケインの夢の旅は終りそうにはない。 これは夢ではなく、過去の出来事を山陵王が再現しているのかもしれんと、 ケインは思う。 「ネフター君、ネイサンの作品を出版するのをやめていただきたい のだが」 出版エージェント、ネフターは、出版社でネイサンの本について の会議中、強制的に宇宙省ビルにつれてこられた。 この宇宙省ビルからは、夜中でも光が輝き、真昼の様に見える 宇宙省ビルから「ニューアーク宇宙空港」がよくみえる。いくせきかの船が飛び立って いき、また戻ってくる。 ネフターは、その光景をながめ、前に座っている老人に答えた。 「とおっしゃいますと」 「彼の作品は地球人類に悪影響を与える」 宇宙省長官ジェイムズ=スターリングは、大きなチーク材の机に すわっていた。 「21世紀の禁書というわけですね、長官。でも民衆の声を無視する わけにはいかんでしょ」 スターリングは白髪で学者然として60歳の精力的な男だ。 「というと、君はネイサンの作品を地下出版ででも出すつもりかね」 「そうです。いいですか。ネイサンの言葉はいまや神の言葉なので すよ」 ネフターの返事には力がこもっていた。そう俺はひょっとしてネ イサン教の伝導者かもしれん。ネフターはそう思った。 「それがこまるのだよ」 別の声がする。横のドアから2mくらいある長身の男が現われた。 「キーン、登場するのが早すぎるのじゃないか」 スターリングはその男に言う。 「いやいい、ネフター君、自己紹介しておこう。私が情報省長官、 キーンネレトバだ」 「わかっております。あなたが、我々の出版界を『地球意志』の下に おこうということは充分にわかっております」 「君の理解力はすばらしいよ、ネフター君」 キーンはスターリングの酒棚から持ってきたリゲル酒をグラスに (続く) ■宇宙から還りし王(山稜王改題) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|