019754 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

「宇宙から還りし王」(山稜王改題) 山田企画事務所

「宇宙から還りし王」(山稜王改題) 山田企画事務所

■宇宙から還りし王 第15回

■宇宙から還りし王(山稜王改題)第15回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
 ケインは、ある時はアゴルフォスの意識となり、ヘリのパイロッ
トとなり、さらに長宮室の空気ともなっている自分に気づく。

 が、ケインの夢の旅は終りそうにはない。

これは夢ではなく、過去の出来事を山陵王が再現しているのかもしれんと、
ケインは思う。

「ネフター君、ネイサンの作品を出版するのをやめていただきたい
のだが」

 出版エージェント、ネフターは、出版社でネイサンの本について
の会議中、強制的に宇宙省ビルにつれてこられた。
 この宇宙省ビルからは、夜中でも光が輝き、真昼の様に見える

宇宙省ビルから「ニューアーク宇宙空港」がよくみえる。いくせきかの船が飛び立って
いき、また戻ってくる。
ネフターは、その光景をながめ、前に座っている老人に答えた。

 「とおっしゃいますと」
 
「彼の作品は地球人類に悪影響を与える」
 宇宙省長官ジェイムズ=スターリングは、大きなチーク材の机に
すわっていた。
 「21世紀の禁書というわけですね、長官。でも民衆の声を無視する
わけにはいかんでしょ」
 スターリングは白髪で学者然として60歳の精力的な男だ。
 「というと、君はネイサンの作品を地下出版ででも出すつもりかね」
 
「そうです。いいですか。ネイサンの言葉はいまや神の言葉なので
すよ」
 ネフターの返事には力がこもっていた。そう俺はひょっとしてネ
イサン教の伝導者かもしれん。ネフターはそう思った。
 
「それがこまるのだよ」
別の声がする。横のドアから2mくらいある長身の男が現われた。
 「キーン、登場するのが早すぎるのじゃないか」
スターリングはその男に言う。

 「いやいい、ネフター君、自己紹介しておこう。私が情報省長官、
キーンネレトバだ」
 「わかっております。あなたが、我々の出版界を『地球意志』の下に
おこうということは充分にわかっております」
「君の理解力はすばらしいよ、ネフター君」
 キーンはスターリングの酒棚から持ってきたリゲル酒をグラスに
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/


© Rakuten Group, Inc.