2006/10/07(土)06:39
「黄 色 い 本」その弐――ジャック・チボーという名の友人
さて、本日は「黄色い本」について。
この本には、黄色い表紙に包まれた四つのお話。
「黄色い本」「CLOUDY WEDNESDAY」「マヨネーズ」「二の二の六」であります。
その冒頭「黄色い本」、手塚治虫文化賞を受賞した事もあって、結構ファンが多いようです。
漫画を敬遠してたヒトにも、受けがいいと聞いたこともあります。
また、高野文子の漫画は純文学ならぬ、純漫画である、という説も。
そうかもなあ…と思います。
ある種の堅苦しさ、理屈っぽさがあるかも。
でも、機会があったら
年齢 性別 漫画派か否か を問わず
まずは 手にとって 構えずに ぼおっ~と読んでほしい。
そして、できれば 時を置いて 何度か読み返してほしい…。
きっと 忘れがたい時間になると思うのです。
するめのように、ゆっくり味わえば 絶妙の旨さが☆
あ、今 思いつきましたが
高野作品は 乾物的なのかも。
見た目 地味だけれど
もどせば 奥深い味がうまれる…なんて。
さらさらと 早春の風
かすかに 花の気配を残し吹き過ぎて
風で運ばれた種子が やがて芽吹き
広がってゆく
…そんな 情景。
主なストーリーは―――
「チボー家の人々」(ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 山内義雄 訳)
を図書室で借りて読んでいる女子高校生・田家実地子さんの
高校最後の一年間の素描です。
彼女の心象をまじえて、日常生活がモザイクのように散りばめられています。
卒業後、彼女は地元の繊維産業に就職することになります。
近づいてくる大きな変化
そして 返却期日までに 黄色い本を読み終わろうと 実地子さんは思うのであります。
5巻ある本を、順番に借りて読んでゆく間
ジャック・チボーは折々に現われ
語りかけます。
実地子さんの日常に寄り添いながら
ジャックは自分の生き方、考えていることなどを
そっと手渡してゆくのです。
読み終わりの日
最後のページを閉じ
実地子さんは、図書室に返却に向かいます。
本が手元になくても
ジャック&その仲間たちの居場所はわかっていて
いつでも訪ねることができるのです。
図書カードに返却日付を押し
最終巻を元の場所に戻します。
5冊並んだ黄色い本を後に
実地子さんは図書室を出て行きます。
本に熱中したことのあるヒトなら
この感覚、味わってますよね。
変わりなく日常生活を続けながらも
新たな友人
新たな場所
新たな経験を
反芻できる…☆。
そして、ジャックが立ち現れたように
実地子さんも
読者の前に甦るわけです。
ジャックと肩を並べて…!
どんな本から
どんな友人を得られるか
人それぞれ…
でき得れば 多くのヒトに (私も含めて!)
勇気と
笑顔をもたらす
時空を超えたよき友人さんが
たくさん たくさん できますように!!!