「獄門島」 横溝正史(画:ささやななえ)
横溝正史は大好きで、学生時代に角川文庫の黒い背表紙の本を随分読みました。 なかでも一番好きなのが「獄門島」です。 横溝作品を読むきっかけとなったのが、ささやななえの漫画「獄門島」なのです。獄門島改版「獄門島」横溝正史 「宝石」昭和22年1月~昭和23年10月「獄門島」ささやななえ 「別冊少女コミック」昭和52年7月号~10月号(以下、ネタばれを含みます) 島の閉鎖性、因習など、横溝作品特有の雰囲気はもちろんのこと、最後の謎解きの場面がゾクゾクするほど好きです。 故嘉右衛門翁の遺志に操られるように、三姉妹の連続殺人は成し遂げられました。 犯人たちは、 1, 千万太の死 2, 釣鐘の帰還 3, 一の生存・復員の三つの条件が揃ったことで、嘉右衛門翁の執念の強さを畏れ、犯行の決意をしたはずです。 ところが、一の生存は、実は嘘だった。しなくてもよい殺人をしてしっまったことを知った了然和尚は憤死する。嘉右衛門翁の怨念の力の恐ろしさを感じながら…。 (あとの二人の犯人、荒木村長は自殺、幸庵先生は発狂してしまう。) もうひとつ、この作品の大きなポイント、金田一耕助の謎解きの鍵となる了然和尚の言葉、「きちがいじゃがしかたがない」。 映画やドラマでは、了然和尚の憤死の描かれ方が不充分だと思います。 和尚の発するキーワードに至っては、放送禁止用語の自主規制によって、正確に表現されていません。 非常に残念です。 その点、このささやななえによる漫画化は、とてもクオリティーが高いと思います。 最初に読んだというせいもあるのでしょうが、作中人物のキャラクターや風貌(金田一耕助や月雪花の三姉妹など)も、私のなかで、この漫画が基準になっているようです。「獄門島」は何度か映画化、ドラマ化されていますが、私の印象に残っているのは[DVDソフト] 獄門島昭和52年(東宝) 監督:市川昆 脚本:久里子亭(日高真也+市川崑) 出演:石坂浩二(金田一耕助) 佐分利信(了然) 大原麗子(早苗)横溝正史シリーズ:獄門島 【リマスター版】昭和52年(毎日放送) 監督:斎藤光正 脚本:石松愛弘 出演:古谷一行(金田一耕助) 中村翫右衛門(了然) 島村佳江(早苗) (島村佳江さんの「早苗」が気に入っています。)