未定の予定~ラビ的非日常生活~

2006/08/02(水)00:11

京極夏彦 「絡新婦の理」

読書感想(作家別 あ行・か行)(283)

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第五弾。 京極夏彦さんの「京極堂」シリーズ5作目「絡新婦の理」を読みました。 今作も1000ページを超える大作なのですが、相変わらず読み易い文体で実質2日間で読み終わりました。 私は分冊文庫版で読んだので標準的な長編分量の本を4冊梯子している感覚なのですが、通常の文庫版で読むと本の重量がどう作用するか少し気になりますねw 今作は冒頭で京極堂が蜘蛛と会話するシーンから始まり、明言はされていないものの蜘蛛の正体は早い段階で分かりましたが、どうやって物語がその冒頭シーンに繋がるのか気になって仕方がなかったです。 作品のテーマも売春や夜這い、ジェンダーに至るまでと徹底的に女性論が中心なのも知らない部分が多いだけに飽きずに読み進められただけでなく、ジェンダーに関しては少しは知っているつもりでしたが、昭和中期という時代背景と京極堂の薀蓄で別の側面が見えたのは感動ものでした。 ミステリとしても多重構造で何がどう繋がるのか不透明な中から鮮やかに新たな展開が発生して行く構成は読み応え十分でしたし、これまでの作品と一線を画す黒幕の存在感は圧倒的でした。 京極堂が出馬して尚、続出する被害者とその果てのラストは生半なシリーズ作品ではないですね。 5作目に突入し、どこかで雰囲気の違う作品を期待していただけに異色作と言える展開は望む所でした。 前作不参加だった木場修が序盤から大活躍してくれるだけでなく、地味に好きな伊佐間と今川も出演してくれるのは嬉しかったです。 少ない出番で存在感を発揮する榎木津や微妙に活躍する益田も良い感じでした。 存在感と言う意味で毎回存在を問われる関口君は非常に意外な登場をしてくれたので、これはこれで良かったと思いますw 脇役として「魍魎の箱」に登場した弁護士の増岡や「狂骨の夢」に登場した元精神科医の降旗が出て来たのも意外でしたが、特に降旗のポジションは意外過ぎですよw ともかく、今作も京極さんの広げる世界観を存分に楽しめた充実した読書体験でした。 引き続き「塗仏の宴」を読み進めようかと思います。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る