西澤保彦 「笑う怪獣 ミステリ劇場」
突如出現する巨大怪獣。地球侵略を企むナゾの宇宙人。そして人々に襲いかかる驚異の改造人間。いい年齢をしてナンパが大好きな、アタル、京介、正太郎の3バカトリオに、次々と恐怖が襲い掛かる!彼らを救うヒーローは残念ですが現れない!密室、誘拐、連続殺人。怪物たちは、なぜか解決困難なミステリを引き連れてくるのであった。空前絶後のスケールでおくる、本格特撮推理小説。西澤保彦さんの「笑う怪獣 ミステリ劇場」を読みました。今作は「本格特撮推理小説」と銘打たれていますが、正にその通りで怪獣や改造人間の登場が大前提となっているSF馬鹿ミステリ作品ですねwとはいえ、これまでの西澤作品の延長とすると至って普通に感じられるのが不思議ですw7編からなる連作作品となっているので以下1編毎の感想です。 「怪獣は孤島に笑う」巨大な怪獣に道を塞がれて無人島に閉じ込められた3人組とナンパした女性たちw逃げ場のない状況で1人ずつ消えて行く・・・という謎ですが、伏線部分が印象的過ぎてオチは読めてしまいました。この1話目を楽しめるかどうかが今作の試金石となると思いますが、私はこのナンセンスさが好きですw 「怪獣は高原を転ぶ」今度は高原の別荘に怪獣が出現。とはいえ、肝心なのは人間達のいざこざであり、怪獣の役割が状況打開に重点が移っているのが面白いですね。それだけに3馬鹿トリオの存在感が際立ちます。 「聖夜の宇宙人」ページ数的に最も短い作品ですが、これは何と言っていいのか困りますねw所謂、連作作品らしい一発ネタなのでしょうが、それにしてもw地味に西澤作品でお馴染みのキャラが登場しておりますww 「通りすがりの改造人間」アンソロジーで既読でした。改めて読んでもミステリとしての肝となる部分が分かり易いので真相に驚けませんでしたが、正太郎と彼女との奇天烈なデートやそれを盗み見るアタル達の描写は中々に好きですねw 「怪獣は密室に踊る」 こちらもアンソロジーで既読でしたが、今作でベストな短編かと思います。強引な点はあるものの怪獣の絡み方やミステリ部分も巧くまとまっていますし、全体的に盛り沢山で読み応えも十分。 「書店、ときどき怪人」路線的には「通りすがりの~」と似ていますが、方向性は全然違いますw風刺的と言うか、ある社会現象に題を取っていますが、それ以上に終盤の展開が圧巻でした。こういう展開も必然と言えば必然だと思いますが、何とも西澤さんらしくなっているのが笑えますw 「女子高生幽霊綺譚」最終話には幽霊が登場。殺される間際に犯人が呟いた言葉から推理を広げるという安楽椅子探偵ものとなっていますが、いつものドタバタが無いので異色ですね。本来的に西澤さんの得意パターンだけに真相へのロジックも決まっているのですが、他の短編同様に伏線が露骨な構成なのが今一つ。