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カテゴリ:読書覚書・一般
前回に引き続き、アメリカにおける臨床心理士(博士)の現実を生々しく描いたYouTubeの動画を紹介します。前半の内容は こちら、「前編」からどうぞ。
登場人物は、臨床心理士の資格を持つ大学の先生、そして、進路相談に訪れた大学四年生の女子学生。 「自分に誇りを持てるようになりたい、だから『ドクター』と呼ばれたい」 という甘ちゃん(笑)な理由で博士課程に行きたい、と言う彼女に対し、先生はあまりいい顔をしません。 学費については学資ローンを利用してまかない、博士号を取得した後でじゃんじゃん仕事して返済すればいいじゃないか、と女子学生は考えているのですが...。 ⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒* (☆先生のセリフは緑字、女子学生のセリフは黒字です。☆) まず、オフィスの賃料を払わなくてはいけないわね。 それから、医療過誤保険、資格認定のための費用、研修のための 講座受講費、広告代、全米心理学会、州の心理学会、地域の心理学会、 そうした全ての所属団体に払う会費を払わなければなりません。 その上、毎月の学資ローン【※注】の支払いもありますね。 わざわざ博士号を取っても、修士だけのセラピストよりも時給にして 10ドルかそこら上乗せされるに過ぎません。
なのに、学資ローンの返済額は修士の場合よりも 【※注:大学の学費を金融機関から借り入れ、卒業後に本人が返済していく タイプのローン。アメリカの中産階級以下の家庭ではごく普通に見られる、学費捻出法。 詳しくは堤未果さんのこの本をどうぞ。高騰する一方の教育費と、学資ローンの悲惨な現状とが第1章で詳細に説明されています。「ポジティブ病」患者がずっと目を背けてきたような、アメリカの暗黒面を覗いてみたい方にはお勧めです。】 【送料無料】ルポ貧困大国アメリカ(2) 私、たくさん患者さんを取って、学資ローンをせっせと返済し、いつか「夢のマイホーム」を買いたいんです。 学資ローンの返済額は、得られる収入の多少によって変わって来るの。 だから、あなたが働けば働く程、月々の返済額は上がる、ってわけ。 だいたい、家なんて買えるはずないでしょ。だって、学資ローンを利用するっ てことは、家一軒のローンと同じくらいの借金を背負うってことになるのだから。
私のだんな様になる人に「夢のマイホーム」を買ってもらえばいいんだわ。 あなた、今、彼氏はいるの? いません。どうして、そんなこと聞くんですか。 今、彼氏がいないんだったら、博士過程に行ってから彼氏なんて どういうことですか。進学したら、一緒に臨床心理学のプロを目指せるような、繊細な心を持つ素敵な男の人と出会えると思っていたんですけど。 確かに、素晴らしい男性がいるにはいるでしょう。 じゃぁ、大学の外で出会いを探すことにします。 そんな時間は無いの。臨床心理士になるには、授業に出て、 ならば、博士課程を終えた後で出会いを探します。 そうなっても、やっぱり時間が無いのよ。臨床心理士の資格取得 が待っています。延べ1750時間の研修期間をこなしながら、国家試験のための 勉強もしなければなりません。 試験では、心理学の11分野を網羅しなければならないんだけど、 実際に臨床心理士が仕事の上で使うのは、たった2分野だけ。 それから州の免許を取るための試験にも受からないとね。 でも、臨床心理で博士号を取れれば、先生みたいに大学で教えることもできますよね。 確かにね。「心理学入門」のクラスとか。 先生は「異常心理学」のクラスも教えていらっしゃいますよね。 ええ。学生達は、自分が抱えている症状についても私にいろいろと 心理学科の他の先生方とお仕事するのは好きですか。 まぁ、悪い人達じゃないわね。でも、臨床心理士っていうのは、 先生、先生はどうして臨床心理で博士号を取ったんですか。 私、自分に誇りを持てるようになりたかったの。それに、「ドクター」 それで、うまく行きましたか。 いいえ。ますます自分が嫌になったわ。 私、何をしたら良いですかね。「あなた、間違ったことをやってますよ」って、 「ライフコーチ」になったらどうかしら。何の教育も訓練も それ、最高ですね!じゃぁ、今から私、「ライフコーチ」になります。こんなに簡単なことだったなんて。先生、ありがとうございます。 どういたしまして。さぁ、私もそろそろ帰らなきゃ。 ⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒* ...「ライフコーチ」(笑) 安易なルートに敢えて背を向け、Ph.D(博士号)プログラムという茨の道を選択し、見事「臨床心理士(Clinical Psychologist)」の資格を手にして働いていらっしゃる専門家の方々。また、資格取得を目指して修行中の学生さんたち。 誠実に、真面目に人間の心の問題と関わっていらっしゃる全米、いや、全世界の専門家の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。 すごいです。 これ程キツい現実にもめげず、患者さん(クライアントさん)のために日夜汗と涙を流しているなんて。 憧れとか、カッコ良いからとか、そんな浮わついた志望動機では、絶対に最後まで辿り着けない、そのくらい厳しい職業ですね。臨床心理士(博士)っていうのは。 これから心理学関係の本を読むときは、著者の出身大学名だけでなく、修士号・博士号を取得した大学院の名前までちゃんと確かめることにします。いわゆる「ディグリー・ミル」と称される教育機関ではない、まっとうな大学で学位を取っているかどうか、そこだけはチェックしましょう。 【※degree mill:実力の怪しい学生にも学位をボンボン授与してしまう、いい加減な『ナンチャッテ大学』のことを指す。営利追求なので学生数は多いが、教育内容はお粗末なことがほとんど。】 「学歴だけが全てじゃないのに。」...はい、ごもっとも。でも!でも! アメリカの場合、「ディグリー・ミル」から簡単に手に入れた博士号をちゃっかり名前の後に付けて、「私、ちゃんと教育あるのよ!」と声高にアピールしている、そういうハリボテタイプの著者が多過ぎるんですよ~。 例えば、前々回の日記で触れましたが、七つのチャクラ話でブレイクしたC.M.さん。彼女、「教員」として就任した某三流ディグリーミル大学から博士号を発行してもらった、という事実が後になってバレて、問題となりました。それから間もなく、彼女の本からPh.Dの肩書は幽霊みたいに消えてしまったのです。) では、今日得た教訓を---。 「まっとうな大学で、まっとうに修行し、難関の試験を突破して まっとうに資格を取得した心理学の専門家と、 ディグリーミル出身のナンチャッテ心理屋さんとを一緒のレベルで語っては、 まっとうな努力を重ねてきた専門家に対して、あまりにも失礼というもの。」 そんなことしたら、【本物】を冒涜したも同然ですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.17 08:38:29
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