243828 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

バリアフリー社会の忘れ物~全盲フリーライター・川田隆一のブログ~※講演等、仕事のご依頼もこちらへ

バリアフリー社会の忘れ物~全盲フリーライター・川田隆一のブログ~※講演等、仕事のご依頼もこちらへ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

ハッシュタグ #箱根花紋 で電報の真実をツイート中!

ハッシュタグ #箱根花紋 で電報の真実をツイート中!

Freepage List

2008.06.15
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
 「おい、真ん中の奴。何をだらだらやってるんだよ!!」

 見知らぬ人からはき捨てられたその言葉が胸に刺さったまま、
もう三日も抜けなくなってしまいました。

のろまな自分を許せないのは、イライラしているのは、とりもなおさず
この私です。

 それは、郵便局のATMコーナーでの出来事でした。

 私はいくつかの銀行に口座を持っています。

原稿料や講演料が振り込まれる口座、公共料金の引き落としなど
生活費を管理する口座、また宝くじをインターネット通販で
購入するための口座等、用途にあわせて使い分けています。

そして、仕事用の口座から生活費へといったように、各々の口座間で
現金のやり取りをしています。

口座間の資金移動は、音声パソコンによるインターネットバンキングでも
可能ですが、振込み手数料を倹約するために、出来るだけATMを
利用して、キャッシュカードで現金を出し入れしています。

 その作業にとって、ゆうちょのATMはもってこいなのです。

凹凸の手がかりがないタッチパネル式ATMの操作が出来ない全盲の
私には、ボタンが付いていて、操作案内や残高などを音声で確認出来る
ゆうちょのバリアフリー対応ATMが、何といっても便利です。

最近では、ほかの銀行にも脇にある受話器から音声案内が出るATMが
普及しはじめてはいますが、一つの支店にバリアフリー対応機が
1台のみということが多く、沢山並んでいる中から、どのATMなら
全盲の私にも使えるのかを探し出すのに一苦労ということも
少なくありません。

その点、ゆうちょのATMなら、機種によって差はあるものの、
基本的には全ての機械が視覚障害者対応になっているのです。

また、三井住友銀行など、ゆうちょATMの利用手数料を無料に
している金融機関も多く、複数の銀行をまたぐ資金移動にとって、
ゆうちょのATMは魅力的です。

 先週の金曜日の昼下がり。

私はいつもの郵便局のATMに並んで順番を待ちました。

混雑していて、私の前には20人ほどの人が待っていることが
周囲の会話で分かりました。

 やっと私の番になりました。

その日は、仕事用の口座から現金を引き出して、生活費用など
三つの口座に振り分けようと考えていました。しかし、あまりにも
混雑している様子なので、郵便局では一つの口座からお金をおろして、
もう一つの口座に入れるだけにしようと決めました。

残りの作業は、今年2月から視覚障害者対応になった近くの
セブン-イレブンのATMでも出来るからです。

その郵便局に3台あるATMのうち、私は真ん中の機械でした。

左側の女性は、私が並んで待っている時から、ATMの操作の手を止めて
ケータイで取り留めのない話を続けています。

「込んでいるのだから、電話を切るかATMを空けるかすれば
いいのに」と気をとられていたせいか、私は引き出した札をATMの
画面に落としてしまいました。

慌てて拾い集めて、別のキャッシュカードを取り出して入金の
操作を始めました。

 そして、もう少しで終わりというその時、

「おい、真ん中の奴。何をだらだらやってるんだよ!!」
と、後ろに並んでいた男性がそう言ったのです。

「真ん中の奴」とは、まさしくこの私でした。

だらだらやっているつもりなど毛頭ないのですが、画面を一目瞭然に
出来る目が見える人とは違って、

「カードを入れてください」

「受話器のボタンで、暗証番号を押してください」

「金額は○○円ですね。宜しければシャープボタンを押してください」

などと、受話器の音声案内をいちいち聞きながらの作業ですので、
目が見える人よりはどうしても余分に時間がかかってしまうのです。

 しかし、そのことで他の人に迷惑をかけないように、出来るだけ
込んでいない早朝や夕方に利用するようにしたり、あの時のように
作業を郵便局とコンビニATMに分けて時間がかかり過ぎないように
工夫したりと、私なりに周囲の人たちのことを考えている
つもりです。

「おい、真ん中の奴。何をだらだらやってるんだよ!!」

言われた次の瞬間、私は慌てて取り消しのボタンを押し、キャッシュカードと
現金をポケットにねじ込んで、出口に向かって逃げました。

「こっちだって好きでゆっくりやってるんじゃないよ、このボケ!」

「そんなに待つのがいやなら、お前専用のATMでも買えよ」

などと、小声でたんかを切りながら外に出ました。

 本当はその男性に面と向かって抗議をしたかったのですが、

「何をだらだらやってるんだよ!!」

などと言うのは、切れやすい人に違いありません。

文句を言って、いきなり刺されでもしたら、元も子もありません。

 目が見えないために動作に時間がかかること。
他人に迷惑をかけること。

それが一番いやなのは、許せないのは、この私自身です。

だらだらやりたくなくても、どうしても時間がかかってしまうことも
あります。

目が見える人のように、何でもさっさと出来たらどんなに
いいだろうと、ATMに限らず、しょっちゅうそう思います。

自分の障害にイラつき、だれよりも許せないのはこの私自身です。

 そして、やむなく周囲に助けを求めると、

「障害者だからって、甘えるんじゃない!」

と、叱られることもあります。

 私も、障害に甘えている障害者は大嫌いです。

でも、助けを求めることが全て甘えだと言われるなら、
私は一日足りとも生きていけません。

私がいつ、白い杖を振りかざして、ATMや乗り物の行列を
飛ばしましたか?

立っていられるのに、いつ、シルバーシートを無理やり
空けさせましたか?

「甘え」とは、そういうことを言うのではないでしょうか。

 全てのことが自分で出来ない。人よりも時間がかかる→だから
私は障害者の認定を受けているのです。

断じて、なりたくて障害者になったのではありません。

 私には、したくても出来ないことが沢山あります。

どんなに見たくたって、何も見えません。

そんな、どんくさくて、のろまな私に一番イライラしているのは、
そんな私のことを許せないのは、社会のお荷物になるのを
恐れているのは、この私自身です。

 けれど、どんなにいやでも、許せなくても、「早くしろ」と
罵倒されても、私は、残りの人生も障害者として生きなければ
ならないのです。

いやだけれど、そうする以外にほかにないのです。

 健常者の皆さんには、この気持ちが分かりますか?

 「もしかして、その人は川田さんの白い杖が見えなくて、
全盲だって気付かなかったのでは?」

友人がそう言って慰めてくれました。

そうかもしれません。次からは背中に障害者マークでも貼り付けて
ATMの前に立つ方がよいのでしょうか。

 しかし、時間がかかるのは、待ってもらいたいのは、何も
目の見えない者ばかりではないと思います。

ほかに障害のある人や、お年寄りだって、そうかもしれません。

それとも、待ちたくない分、障害者がガイドヘルパーをばかすか
利用して、さくさく動く方が社会のためだと、
みんなはそう思いますか?

ガイドヘルパーのために多くの税金が使われていることを、
知っていますか?

社会が障害者を差別するために余分に支払っているコストが
いくらくらいあるのか、差別がなくなれば倹約出来る国の予算が
どのくらいあるのか、そろそろそんなことも考えてみませんか。

 「おい、真ん中の奴。何をだらだらやってるんだよ!!」

 こんなこと、しょっちゅう言われ慣れているはずなのに。

自分が強くなるしか解決の方法はないと分かっているのに‥‥。

 あれ以来、ずっと落ち込んでいます。

「甘えている」と軽い気持ちで障害者を批判する人は、
「早くしろ」と罵倒する人は、あなたも障害者になってください。

 それでも同じように言えますか?「遅い!」と罵倒しますか?

 ごめんなさい。いまは健常者のことが憎くて憎くてたまりません。

 ※お知らせ

糖尿太郎は本を出版しています。

障害者が社会への感謝を述べるだけでは、誰もが共に生きられる
真のノーマライゼーションは実現しません。

私自身が経験した差別や偏見、世の中への怒りを素直に伝えることも
よりよい社会を目指すために必要ではないかと考え、本書を
書きました。

インターネット書店に読者の方が書いてくださったレビューを
ご覧頂ければ分かるように、全ての方に「さわやかな読後感」を
もって頂ける本ではありません。

「さわやかでない」のは、私の表現力の乏しさもさることながら、
題材としている「障害者問題」そのものが、決して「さわやか」などと
いえるものではないからだと思います。

私は、私が思う「本当のこと」を素直に書きました。

さわやかではないかもしれませんが、ぜひ一度お読み頂けましたら
幸いです。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.07.02 21:03:58


Calendar

Favorite Blog

女王のトランク New! 3RCNさん

夢の宝石箱 みやらび3さん
珍味あります!やま… 本の虫☆やまねこさん
自称 スーパーはり… ハイパー鍼氏さん

Comments

コメントに書き込みはありません。

Headline News


© Rakuten Group, Inc.